なんでやねんDTP・新館

はてなダイアリーから移行しました…

朝日新聞連載記事を組む(朝日字体・ルビ)

朝日新聞の連載(75本)を単行本にする仕事が舞い込んだ。記事自体は連載中から目にはしていたのだが、そのコピーを原稿として渡されて少し戸惑った。
新聞は勿論毎日読むのだが、その組版方法を仔細に検討したことはない。
渡された原稿を見てみると悪名高き朝日字体は勿論のこと、ルビの振り方・連続約物の処理など、一般書籍を主に組んでいる私の常識とはかなり違うものだった。
1行の文字数の少なさなど、新聞という特殊メディアと一般書籍の組版を同等に考えるのはかなり無理があるのは承知しているつもりだが...........。



で、何が問題かというと、「著者サイドが新聞の組み方を気に入っている」という編集者の言葉。さらに新たに組むのも1行17字詰めという短さ。


とりあえず、段落先頭および行頭括弧類については新聞の通り、「段落先頭は見た目1角半アキ/行頭は見た目半角アキ」で妥協(好みではないが)し、連続約物の処理については、さすがに編集者とも常識的な線(基本半角アキ、同方向ベタ)で意見が一致した(1行の字数が少ないので不細工な箇所も出現する危険はあるが、そこは調整するとして*1)。


朝日字体については、電話で「朝日新聞社そのものが連載を単行本化するにあたっては朝日字体を使用しないらしい」という話などを含めて、ある程度説明し、使用しないことを納得していただいたのだが、後ほど補足として以下のメールを送っておいた。(原文ママを整形)

                                • -

お世話になります。


先ほどの朝日字体の件、現在では改められています。
以下参照ください。


ウィキペディア/朝日文字
http://ja.wikipedia.org/wiki/朝日文字
朝日新聞の字体変更
http://d.hatena.ne.jp/NAOI/20070109/1168334642
朝日の略字
http://openblog.meblog.biz/article/53131.html


以下参考
青空文庫と外字
http://attic.neophilia.co.jp/document/aozorabunko_to_gaiji.html


一般書籍で用いる字体・字形については、常用漢字・人名漢字以外は「いわゆる康熙字典体」とする----と認識しているのですが、
上記リンク「青空文庫と外字」の中にうまくまとめた文章がありました。

編集者の多くは、漢字の字体に関して、次のような共通する秩序意識をもっている。

  1. 印刷物には、文字本来の形を示した「正字」を用いる。「本来の正しい形」とは、康熙字典に示されたものとする。
  2. 字体を簡易化した「俗字」は、用いない。
  3. ただし、戦後の国語改革において「日常使用する漢字の範囲を定めた」当用漢字には、大幅に簡易字体が採用された。これらは本来「俗字」ではあるけれど、公に定められたものである。そこで、ここで採用された「俗字」は「新字」と位置づけ、これに限っては簡易字体を使用する。
  4. 当用漢字に代わって、現在は常用漢字が用いられている。そこで常用漢字表に採用されている「俗字」は「新字」と位置づけて、これを用いる。加えて、人名漢字別表に示されている「俗字」も、「新字」として扱う。
  5. 「新字」には、偏やつくりなどの漢字を構成するパーツごとに、簡略化するかしないか、する場合にはどう簡略化するかという規則を定め、それに基づいて形が決められたものがある。本来この簡略化のルールは、当用漢字(後には常用漢字)と人名漢字のみに適用されるべきものである。ところがこの枠を踏み越して、「正字」に簡略化ルールを適用してしまった例がある。朝日新聞による、いわゆる朝日文字などがそれだ。こうした「拡張新字」は使用しない。
                                • -


最後の引用は「朝日字体」で検索していて、偶然見つけたものだ。
不勉強ながら、今までこの件についてこのようにうまくまとめたものにお目にかかったことがなかったので、編集者に対して失礼かと自問しつつも、敢えて付け加えておいた。


当該HP末尾には

  • 筆者:富田倫生
  • 初出:「人文学と情報処理」第26号「特集 文字コード論から文字論へ」、勉誠出版、2000年4月15日発行
  • ウエッブ版公開:2001年3月15日

とある。


次にルビだが.......。



促音や漢字にオーバーしたルビをかける1や2については、ルビ設定画面で「ルビが親文字より長い時の調整」の「文字かけ処理」を「無制限」に設定することで実現できる。
しかし、3や4のようにセンターにルビが振られた隣の文字にオーバーしたルビをかけるのは、さすがに不可能だ(もしかしたら私の力不足?)*2
InDesignCS2の機能的な限界で不可能なことを説明し、基本はモノルビとし、例外的に親文字の幅を超えるルビについてはグループルビとすることで納得いただいた。
なお、5については行末だからか?とも思ったが、次に続く漢字にも2字ルビが振られている場合は、6の例にもあるように、行中でも同様に処理するのだろうと思う。
蛇足になるが、画像をご覧いただくと判るように、確かに字形を変更しているらしいことも確認できた。

*1:幸か不幸か、デザイナー氏の指定は15Q平体90%で字送り14Hというもの。0.5Hのアキがあるので半角程度の調整は何とでもなる。070906_10:05追記

*2:これは簡単に実現できた。ルビの食い込みをご参照あれ。