なんでやねんDTP・新館

はてなダイアリーから移行しました…

資料:写研の正字文字盤

写研の正字文字盤を参考資料として掲げておく。


原典は手動機にオマケとして付いてくる「文字配列表」という、文字盤をそのままなんらかの方法で印刷したシート(最下部に画像)*1


まず下の3点、石井細明朝体_LMの手動機用の正字文字盤で右下に1967年の刻印が見える(左上のSは正字の略)。
(当用漢字の旧字体に加えて1951年制定の人名用漢字の旧字「藤/彦/巌など」が収容されているが、76年に追加された「渚/那など」の旧字はない。20090224追記
メインプレート部の右下には1981.1改訂とあるが、直後の1981.10には下のLHMにみられるように、常用漢字人名用漢字に則した大きな改訂が加えられた。(20090213、0217追記
〈画像クリックで別窓に拡大表示〉



次の3点は本蘭細明朝体_LHMの手動機用の正字文字盤。刻印は1975年となっているが、こちらはシートのタイトル部に「常用・新人名漢字用」とあって、1976年7月30日の「人名用漢字追加表」を採り入れたものになっており、例えば「那」の旧字体が追加されている(真ん中の画像のタテ12/ヨコ4)のがわかる*2
見落としていたが、メインプレート部の右下には1991.4改訂とあり(実際には1981.10に常用漢字の制定に合わせて大きく改訂されていることが判った:この部分090217追記)、コメント欄での安岡さんのご指摘通り、1981年10月1日の「人名用漢字別表」での追加を反映したモノになっているようで、例えば「慧」はメインプレート(タテ35/ヨコ69)に新字体があり、旧(正)字体は正字文字盤の3(タテ1/ヨコ19)に収録されているが、上の1981.1改訂となっているLMではメインプレートの字体は旧(正)字体のママ。
なお、コメント欄でご指摘のあった「蛍/螢」は共にメインプレートにあり、LHMの場合はタテ38/ヨコ21に新字体、タテ17/ヨコ62に旧(正)字体が収録されている。これは古いLMも細かい位置は違うものの、ほぼ同じ位置に収録されていて、新字体の方は「缶/桧/篭/竜」など、比較的使用頻度の高いモノを一角に集めて採字の効率化を図っているのだろう。(20090213追記
先日のワークショップの全体討論で京大の安岡孝一氏が呈された疑問、「人名用漢字がいつ頃から規範となったのか」ということへのひとつの解答として有効かもしれない。
なお、蛇足になってしまうが、これらの写研の字形の変更はJIS漢字といわれるものの制定/変更とは何の因果関係もないであろうことも付記しておく。(青字部分09021312追記



試しにメインプレート部の「那」を確認すると新字体になっていた。



さらに大きいメインプレート画像へのリンク(20090213追加)
LM_1981.1_ネガLM_1981.1_ポジ
LHM_1991.4_ネガLHM_1991.4_ポジ


以下はオマケに。


汎用外字集合文字盤とあるように、メインプレート外にある文字群から比較的使用頻度の高い文字や旧字/拡張新字体等々の異体字の類を2枚のサブプレートに集めたモノ*3
例えば、「茨」が収録されているが、メインプレートを確認すると「次」部の1画目はちゃ〜んとヨコ棒になっているのがわかる(上の画像で確認可能、タテ12/ヨコ61)。



*1:スキャン後、階調及び左右を反転した

*2:他にも差異があるだろうが、面倒なので割愛

*3:出典は写研が編集発行した画引索引帳、第13版(平成3年)