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禁則調整方式=調整量を優先のすゝめ_再02

もう少し説明を加えて「調整量を優先」を推す。


下のような例*1を用意した。



基本的な設定は

  • コンポーザーは「日本語単数行コンポーザー」
  • 文字組みアキ量設定はデフォルトで用意されている「行末受け約物全角/半角」
  • 揃えは「均等揃え(最終行左/上揃え)」
  • ぶら下がりは「なし」

と昨日と同じ(但し括弧部分も同サイズ=20Q)。見ていただけば判ると思うが


判りやすく上揃えにした画像

  • 1段落目は行頭括弧によって半角分の半端スペースが発生している例。調整可能な約物はなく半角分字間が割られている。
  • 2段落目は行中の連続約物によって半角分の半端スペースが発生している例。これも半角分字間が割られている。
  • 3段落目は行頭禁則文字を処理するため前の文字を含めて追い出されている例。全角分字間が割られている。
  • 4段落目は行末禁則文字を処理するため追い出されている例。これも全角分字間が割られている。


この●を読点に変更して、調整可能な箇所を作ってやると……



行中に調整可能箇所があると、行頭/行末の禁則に関わる場合は「追い込み優先」が機能する(青▲)が、禁則に関係しない場合は(調整可能箇所があっても)「追い込み」処理はされない。


判りやすく上揃えにした画像

  • 蛇足だが……「追い出し優先」で変化ないのは当然のこと。


これらを「調整量を優先」に変更してやると……



調整可能な箇所がある場合(赤▲)は、行頭/行末の禁則に関係なく追い込まれる。

  • 文字組みアキ量設定はデフォルトで用意されている「行末受け約物全角/半角」


判りやすく上揃えにした画像

  • 1行の文字数が少ないので調整箇所が限られているのに加え、文字組みアキ量設定がダメダメなので不自然ではあるが……(同前)。


これに少々カスタマイズした「文字組みアキ量設定」を適用してやると……



「文字組みアキ量設定」のカスタマイズが効いて追い込み処理がされ(緑▲)、左右とも2段落目の読点の後ろのアキが上の例よりも確保された。
どのような変更を加えてあるかというと、区切りの強度から考えて読点類の優先度を変更したり、特定部分の最小値などを変更してある。
読点の後ろのアキや括弧類の前後のアキが少ない(ここに調整が集中してしまっている)のが気になるなら、仮名絡みの部分の優先度をそれらより上位、あるいは同等にしてやるとより自然なアキが確保される*2ハズだ。




※画像は以前に使用したCS2での設定時のモノを流用……今回の流れの中で微修正を施して再提示し、検証を加える(つもり)。


クドクドと長く説明してきたが……行中に半端が発生する要因は

  • 段落先頭や行頭の括弧類(中点類)の扱い
  • 行末の句読点類・括弧類・中点類の扱い
  • 連続約物
  • 和欧混植
  • 級数混植
  • 3字以上のルビかけ処理
  • 割注

等々、数え上げればいくつもあるにも関わらず、それらの半端は禁則調整方式を「調整量を優先」にすることでしか調整ができず、他の設定では行頭/行末の禁則に関わる場合にしか調整されないのである。


ひとつ見落としがちな例を……(手抜きの作例で申し訳ないが)以下のようなグリッドを用いた均等ツメ組において、例のように数字が入ると(この場合、和数間のアキは0%)、たとえそれが丁度半角の字幅だとしてもツメは解除され、(もちろん行頭/行末の禁則に関わることではないので)ほぼ1角分のアキが各字間に割り振られることとなってしまう(上)。
仮に「調整量を優先」を適用するにしても(一般的な)調整箇所がない場合には、下のように、仮名文字間のアキ最小値をマイナスに設定するなどした文字組みアキ量設定を使用することでしか、そのほぼ1角分のアキを吸収することはできない。
この辺りは以前の「均等ツメ組と数字」と題する記事にもう少し詳しく書いてあるのでご参照願いたい。



しつこいようだが、「追い込み優先」など他の設定では、行頭/行末の禁則に関わる場合しか行中で生じた半端を処理できないのに対し、「調整量を優先」では行末/行頭に位置する文字が「禁則対象文字であるかないかを問わ」ず、行中で発生した半端を主に「追い込む」方向で処理可能だということ。
そして、より適切にカスタマイズされた「文字組みアキ量設定」を併用することによって、あまり調整の目立たない組版、つまり「より自然な組版=可読性の高い組版*3が実現できるだろう……ということである。

  • またまた蛇足になるが、作例はタテ組だがヨコ組でも理屈は同じ。


以上説明してきたように、「調整量を優先」は是非とも使うべき機能だと思う。続いて併用する「文字組みアキ量設定」の説明に進みたいところだが、そうも簡単にはいけない、残念なことがある。
それは「調整量を優先」を「ぶら下がり/あり」で使用すると重大なバグ*4が発覚するということ。
その回避策として「文字組みアキ量設定」も関係してくるので、次回はそのバグを中心に……。

*1:DTP Booster 005のレジュメ_6頁では右の画像が間違っていました_スミマセン

*2:現状では優先度「なし」なので、優先度上位の調整量では不足する場合にしか効かない

*3:どのような状態を「可読性が高い」とするかは色々意見もあることだろうが……

*4:Adobeさんはバグだとは認めていないが……