なんでやねんDTP・新館

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熟語ルビ/ルビのぶら下がり etc.

ここ数回ルビに関して連載のようになってしまったが、もう少し……


グループルビでルビ文字が極端に少ない場合
以下のようにグループルビで親文字列長に比してルビ文字列長が極端に短い場合



親文字列とルビ文字列の対応を明確にするためには


  • 親文字列の全長から二分(ルビ全角分)内側に配置する必要がある


半角入力(1byte)ルビ
上の作例では全角(2byte)欧文を入力したが、半角(1byte)欧文を入力すると
組数字などの設定オプションによっては以下のように変化する。


組数字=0桁, 欧文も含める=OFF, 幅に合わせる=ON ※デフォルト
組数字=2桁, 欧文も含める=ON, 幅に合わせる=OFF
組数字=2桁, 欧文も含める=ON, 幅に合わせる=ON


まとめて表にすると……以下の通り。



  • 組見本はヒラギノ明朝W3で、「Open Type Pro のルビ字形を使用」は ON。2桁以上の数字は等幅半角/等幅三分を使用し、アルファベットは等幅半角/親文字の半角に合わせた適切な長体となるようだ(この部分_100522 15:00頃修正)。

※上記補足の参考画像


熟語ルビ
JIS X 4051の第3次規格『日本語文書の組版方法(JIS X 4051:2004)』で新たに定義が追加された*1「熟語ルビ」*2という組版方法(考え方)もあるが、InDesignの現状では自動処理は到底無理だし、手作業で行うには煩雑に過ぎるので現実的ではない*3
JIS X 4051では下の「環境(かんきよう)」のような場合、親文字間を四分アキとしている。つまり親文字1/2字分のルビのオーバー量をルビかけ1:親文字間2:ルビかけ1としているということだろう。(この部分20110805追記



尚、「熟語ルビ」をはじめルビの基本的・一般的な組版方法を理解するには(高い)『日本語文書の組版方法(JIS X 4051:2004)』を購入して読むよりも、ネット上の日本語組版処理の要件(日本語版)3.3 ルビと圏点処理が判りやすくまとめられており、一部*4はより柔軟(現実的)に改められているのでオススメ。

  • 「熟語ルビ」に関する上記文書中の注記は以下の通り

熟語に付けるルビでは,書籍の場合は,熟語としてのまとまりを重視する配置方法が一般的である.ただし,コンピュータ組版機械的な処理では,熟語としてのまとまりを重視する配置方法はむずかしく,そのような配置方法としない例も増えている.新聞などでも,熟語としてのまとまりを重視する配置方法にはしていない.なお,学習参考書などでは,個々の漢字の読み方を示すことが重要と考え,従来から個々の漢字の読み方を示すことを重視した配置方法としている.


ルビのぶら下がり
以前の記事末尾に「●オマケ」として、「文字かけ処理=無制限」とした場合は段落スタイルの画面では「ルビのぶら下がり:無制限」と表示され、「親文字間の調整=調整しない」を併用した場合にルビが版面外にぶら下がることをメモ的に記しておいたが、本来、ルビは行末を越えて配置してはいけないというのが一般的/常識的なルール
しかし個人的には、「行末(行頭)にかかるルビの親文字は行末(行頭)に合わせる」というルールを採用し、かつ、本文が「ぶら下げ/あり」の場合には、「ルビのぶら下がり」をも許容してもいいのでは? というふうに考えている(処理の容易さに鑑みても)。私のような個人がごく一般的なルールに楯突くのもなんだが……*5


こんな具合になる(参考まで)。



ルビ1文字分はやはりみっともないが、半字分なら……アカン? そうですか……
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
いずれにしても、今まで何回かに亘って確認してきたように、中付き/モノルビで親文字列長がルビ文字列長未満(つまりルビが親文字をハミ出す)で、その文字列が行中にある場合、前後の文字クラスやルビかけ量に関係なく、無条件に親文字とルビ文字をセンターで揃えるという大前提を実現するには、「文字かけ処理=無制限」かつ「親文字間の調整=調整しない」という設定しか解決策が無いというのが大きな問題で、その結果として当然「ルビの相互干渉(重複)」が発生し、それを解消するために「文字前後のアキ量」を調整・設定すると「ルビの二重化」が発生するという、無限連鎖のような悪循環に陥るというのが我がInDesignの現状であり、限界である*6


ルビに関してはこれで一段落とするつもりだが、ここにほぼ3年前の記事に掲載させていただいた、JIS X 4051の第3次改正原案作成委員会の幹事を担当されていた小林敏さん*7日本エディタースクール)からのメールの一部を再び掲載させていただく。

*また,個々の要素,例えば,“ルビ処理”についても“JIS X 4051”で規定している“熟語ルビ”の処理を実装している組版ソフトは,現在のところはないでしょう.しかし,日本語組版処理のルビとしては,熟語の場合は,それなりに工夫が必要ですよ,と指摘することが重要で,その指摘に対し,組版ソフトを開発する人に対する問題提起というか,課題を与えることにつながり,それにより使いやすい組版ソフトが開発されていけば,仕事の合理化につながると思います.

3年前の……である。実際は6年前にあたる「JIS X 4051:2004」*8の提案・指摘を「組版ソフトを開発する人」たちはどう受け止めているのだろうか?


この他にもInDesign居残り補習室さんのルビの文字間と題するエントリ*9で挙げられている件など、ルビに絡む問題はまだまだ深い。 
Adobeさんにはさらなる改良を期待し、(一部に意外とウケが良かった)ちょっと前に記載した一文を再掲しておく。

ここ数日のルビ関係の記事に関して言うと、ルビかけ対象文字から「行頭禁則和字」を外していることに関して、Adobeさんは「『日本語文書の組版方法(JIS X 4051:2004)』に準拠して……」というクセに、3字ルビ及び4字ルビ(行頭/行末を含め)の処理に関しては『日本語文書の組版方法(JIS X 4051:2004)』に準拠しているとは言い難い。ならば組版者に余計な処理を強いるこれらの挙動、これらはいわば「バグ」ではないのか?


昨年の夏上京した折りに、「AdobeInDesignの日本語文字組版チームは縮小(解散?)された」との噂も耳にした。こんな現状で「日本語文字組版に関しては完成した」と思ってもらっては困る。当ブログでは他にも色々な不具合を報告しているつもりではあるが……「バグ」を修正しないで新しい機能ばかりを追求されてもあまり、いや全然、嬉しいことではない。


当ブログ内関連頁
3字ルビ及び4字ルビの処理
行頭及び行末にかかる3字ルビ及び4字ルビ
ルビ_漢字にもルビ半角分かける場合
5字ルビの組み見本

*1:解説197頁参照

*2:熟語としてのまとまりを重視する配置方法とされ、簡単に言ってしまえば、モノルビとした場合にルビが親文字をはみ出す組み合わせを含む熟語のルビは、行中ではグループルビ的に、行末/行頭に別れる場合はモノルビ的に振る舞う(はみ出す組み合わせを含まない場合はモノルビと同じ)。

*3:実際に「やってくれ」と要請されればこういう処理をするに吝かではないが、当然、それに伴って作業料金も請求せねばならない。故に、こちらからこういう処理を提案することはマズない

*4:ルビかけ許容文字など

*5:実はこっそりと試していたりする……秘密

*6:もちろん行末/行頭に位置した場合は、さらに別の処理が必要なのは見てきた通り

*7:上記「日本語組版処理の要件(日本語版)」の編者の一人でもある

*8:奥付は平成16年3月20日発行

*9:コメント欄に挙げた画像はコレ