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Illustratorでの文字組_その3_「行送り」補足

Adobe Illustratorというアプリは長文の日本語文字組版に使用すべきではない」という認識を前提として、それでも使わざるを得ない環境に居られる方に向けて、イランお節介みたいな記事を何回かに分けて掲載するつもり。あくまでも私個人の主観的な意見でしかないが、何かの参考になれば嬉しい。

Illustratorでの文字組_その3_「行送り」補足
前回の記事で,Adobe Illustratorを使用した日本語文字組版で、“※(行送りが固定された)横組みで行中の文字サイズが異なる場合は「日本語基準の行送り」を採用するのは避けた方がコントロールし易いだろう”としたが,少々補足しておかなければならない。
別のケース,つまり行送りが固定ではなく,行間のアキでコントロールしたい場合には「日本語基準の行送り」を採用した方がいいという例。


以下のような文字組みを用意し,1行目は全て8Qに,2行目の「日本語文字組版」を24Q,残る仮名部分を12Qに変更した*1


  • 公開当日12:40頃,画像をより適切なモノに差し替え


で,行間アキを「0」のベタ状態にしたいとすると……


日本語基準の行送りの場合



「日本語基準の行送り」の場合は各行中の最大サイズを行送りに設定してあげればよいし,アキが必要なら行送りにプラスしてもいいし,段落の前後アキでコントロールしてもいい。


だが,
欧文基準の行送りの場合



同じようにしても,ベタの状態にはならない(欧文ベースラインが基準なので当然のこと)。


大きくして,理解を助けるために図形を添えてみると



こういう状態になっている。


つまり欧文ベースラインが基準なので必然的にこういうことにしかならない。
それを考慮して……「欧文基準の行送り」を採用する場合は(一般的な和文フォントの欧文ベースラインは880/1000の位置に設定されているので)
例えば3行目の行送りには「24Q×0.12+16Q×0.88=16.96H」を設定しなければならない。



  • 2行目は「8Q×0.12+24Q×0.88=22.08H」。※1行目は「欧文基準の行送り」では無関係。


もちろん,こうしてキチンと演算したモノ(緑)は先の「日本語基準の行送り」で処理したモノ(赤)とほぼピッタリと重なる(黒=オーバープリントプレビューの表示)。



誰もこんな面倒な演算はしたくはない……このような場合には「欧文基準の行送り」に固執する必要は微塵もない。
「行送りの基準位置」の設定による挙動の差を理解し,ケース バイ ケースで臨機応変……ということ。

*1:文字揃えは「平均字面の下」とした