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「分離禁止文字」の挙動…その1_基本編

禁則処理セットの「分離禁止文字」の挙動を確認・検証していたところ、InDesignIllustratorで挙動にかなりの差があることがわかったので報告しておきます。
※長くなるので、3回に分けて連載することになります。


1) 「分離禁止文字」とは…


まず、それぞれのアプリケーションが準拠していると謳うJIS X 4051で「分離禁止文字」の定義がどのようになっているかを見てみましょう。


  • JIS X 4051、8頁より


身近な例で簡単に説明すると……「分離禁止文字」とは、例えば連続する三点リーダーやダーシなどがそれにあたり、その間に行長調整処理によるアキを入れることを禁じ(分離禁止)、かつ行末行頭に分割することを禁ずる(分割禁止)という禁則ルールという理解で十分でしょう(連続する2文字とは少し異なりますが、縦組みにおける「大返し」も同様に考えていいでしょう)。

蛇足になりますが、一般的に「行頭禁則文字」や「行末禁則文字」と言われるモノはある意味では分割禁止の対象であるとも考えられます。
つまり、句読点や終わり括弧類と「直前の文字とは分割禁止」…故にそれらは「行頭禁則文字」となりますし、始め括弧類と「直後の文字とは分割禁止」…故に始め括弧類は「行末禁則文字」となります(またJIS X 4051では、これらの間には行長調整処理によるアキは挿入しません=分離禁止)。また、「強い禁則」の対象となる小書きの仮名や音引きも「直前の文字との結びつきの強さを考慮した場合には分割禁止」…故に「行頭禁則文字」となります……と考えることができるでしょう。


JISの定義とは離れますが、定評ある組版の解説書からの引用も参考に掲げておきます。

分離禁止とは該当する文字間を分離(文字間に空きまたは改行を挿入すること)してはならないことを言い、行頭禁則・行末禁則と同じく禁則の一種です。時折、分離禁止と分割禁止とを混同した記述を見かけますが、厳密にいえばこれは誤りです。
なぜなら、分離禁止は分割禁止の概念を含みますが、逆に分割禁止は分離禁止を含まないからです。とはいえ、一般に分割禁止に該当する文字列は、同時に分離禁止にも該当する場合がほとんどですので、混同して呼ばれても支障はないのかも知れません。
さて、分離禁止の対象となる文字列ですが、これには連続する三点リーダー・二点リーダー・ダーシおよび連数字があげられます。縦組の場合はこれに大返しが加わります。
…逆井克己著『基本 日本語文字組版』〇六五頁

分割禁止とは、ある特定の文字列を行末で分割してはならないとするものです。分割禁止の対象となるものは以下の通りです。
●分離禁止文字列
●欧文単語(本来は分離禁止)
●連数字と単位記号
●前置省略記号と連数字
●連数字と後置省略記号
●個別の指定により分割禁止とする文字列
…『基本 日本語文字組版』〇六七頁


で、InDesignでもIllustratorでもデフォルトの禁則処理セットにはJISの定義通りの3文字が登録されています。



  • ユニコードでいうと、前から順に U+2014/U+2025/U+2026 です
  • U+2015 はデフォルトでは登録されていません
  • 大返しについては前の部分を「行末禁則文字」、後の部分を「行頭禁則文字」とすることで「分割禁止」は実現可能です


※この後、InDesignIllustratorの各アプリケーションにおける挙動の違いについて、2回に分けて連載します。


「分離禁止文字」の挙動…連載頁へのリンク
その2_InDesign編
その3_Illustrator編