「分離禁止文字」の挙動…その3_Illustrator編
3) Illustrator上での「分離禁止文字」
さて最後は、Illustratorの場合……(作例はCS6)
InDesignの場合と同様に上のような文字列(エリア内テキスト)を作成し、現状の行頭揃えを行頭行末揃え(両端揃え)に変更して2字分のアキを調整しなければならない状況を創りだしてみます(もちろん、デフォルトで禁則処理セットの「分離禁止文字」に登録されていないU+2015と大返しも例に挙げています)。
その結果は……InDesignの場合とはかなり異なりますね。行長調整によるアキが挿入されていないのはU+2014と大返しのみで、何故か前後の文字との間にもアキは挿入されておらず、一般的な組版ルールからはハズレた組版結果となってしまっています。その他は行全体で均等にアキが挿入されています。
これは(上のように)、段落パネルメニューの「分離禁止処理=OFF」にしてもなんら変わりません(変わらないのはInDesignも同様でしたね)。
つまり、「行長調整によるアキを挿入してはならない文字種」は禁則処理セットの「分離禁止文字」とは無関係のところで決定されているということに関してはInDesignと同様なのですが、文字種が異なりますし、前後の文字との間にもアキは挿入されません。
そうであるならば、やはりあの「分離禁止文字」に登録されている文字はどういう挙動をするのか?
また、段落パネルメニューの「分離禁止処理」のON/OFFは何を制御するのか? という疑問が湧いてきます。
段落パネルメニューの「分離禁止処理=OFF」の状態で、上のような文字列を作り、そのテキストエリアサイズを変更してみます。
当然ですが、特に禁則処理はかかってはいませんね。
「分離禁止処理=ON」に変更してみますと……
ご覧の通り、デフォルトで「分離禁止文字」に登録されている文字種だけが「分割禁止処理」されて追い出されていますが、U+2015と大返しは特に処理されていません(この挙動はInDesignと同様です)。
やはり、禁則処理セットをカスタマイズしてみましょう。
初回の記事に記したように、大返しの後部分は「行頭禁則文字」に、前部分は「行末禁則文字」に登録することで(結果的に)「分割禁止」とできますし、U+2015は「分離禁止文字」に登録することで「分割禁止」とできます。
ここまで見てきたことで判ったことは……Illustratorでも(InDesignと同様に)、「行長調整によるアキを挿入してはならない文字種」という意味での「分離禁止文字」は禁則処理セットの「分離禁止文字」に登録されているかどうかは特に関係なく、アプリケーションが独自にその文字種を決定しているのだろうということ。
※但し、その文字種もアキの入らない部分もInDesignとは異なり、かなり困った仕様です。
そして、登録されている文字はどういう挙動をするのかといえば、(やはりInDesignと同様に)「分割禁止文字」として振る舞うだけだということです(段落パネルメニューの「分離禁止処理」はそのON/OFFということ)。
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しかし、まだオマケがあります(これが更にややこしいのですが……)。
上記のことを検証している過程で気付いたちょっとしたことを、twitterで以下のようにメモ的に呟いたところ……
【少し訂正】…Illustratorにおける小塚ゴシックのU+2014の字送り量が不正…(横組みでも同様…尚、InDesignでも同様ですが明朝は大丈夫なのを確認しました…ものかのさんに感謝!)…→ http://t.co/bvBb2cI3Cw
— なんでやねんDTP/おぢん (@works014) 2014, 7月 28
- 引用すべき呟きを間違えていたため、この部分差し替え(2014.08.08)
それに呼応するかたちで@n_yujiさんが気になる呟きをなさいました。
ダッシュはU+2015使うからいいとして、イラレの縦組みは三点リーダ「…」の縦組み字形が自動では呼び出されない謎不具合があるから……。
— 西岡裕二 (@n_yuji) 2014, 7月 28
- 左下の日付の部分をクリックしていただくと、関連ツイートと共に表示されます
(もちろん、私自身は気付いてはいなかったのですが…)どういうことかというと、下のように縦組みの場合には三点リーダー(他に二点リーダー及びU+2015も)が文字のセンターからズレているということでした(横組み用を回転しているだけではないかという疑惑)。
これを、字形パネルから縦組み用字形をダブルクリックして置き換えてやる(各2字目)と……センターに揃います。
ということで、上の最後の状態(7番目の図)の字形をそれぞれ置き換えてみましたが……
どう説明していいのかよくわからないことになってしまいました……二点リーダーやU+2015の縦組み用(U+FE30/U+FE31)を「分離禁止文字」に登録すればいいのでしょうが……深入りしてもあまり意味はありませんので、こんな挙動であるということだけをご報告するに留めておきます。
※いずれにしても、Illustratorの「分離禁止文字」に関する挙動は、全体的にかなり残念な仕様であるということだけは確かです。
●「分離禁止文字」の挙動…連載頁へのリンク
その1_基本編
その2_InDesign編