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プロポーショナル字形とは何か

OpenTypeFontのPr5以上の文字セットには仮名の「プロポーショナル字形」が搭載されています。

  • InDesignでは字形パネルのメニューから「プロポーショナル字形」を適用することで当該字形に置換できますが、Illustratorでは「字形パネル」から「プロポーショナルかな」を表示して、1文字ずつ置き換えるしか方法はありません。

これはOpenTypeFontの「GSUB」の機能を利用して、(一般的に)全角幅の字形(グリフ)そのものをプロポーショナル幅の字形(グリフ)に置き換えるものです。
一方の「プロポーショナルメトリクス」を適用することは、OpenTypeFontの「GPOS」の機能を利用して、グリフの位置と幅を調整するという違いがあります。
メトリクス(自動)カーニングは、「プロポーショナルメトリクス」を適用した状態に、同じく「GPOS」の機能を利用して(ペア)カーニングを付加すると理解すればいいでしょう。

この辺りのOpenTypeFontの内部情報については、現在発売中の「+designig Vol.38」 p.84-85に詳しく書かれていますので、是非ご参照ください。

このややこしい関係を動画で解説してみました。


プロポーショナル字形とは何か

http://www.youtube.com/watch?v=/DiIx_uZT2Js


ここでも簡単に画像と文字で記しておきます(画面はInDesign CS6)。

  • なお、文字列のバックが濃い黄色になっている部分は字形そのものが置換されたことを示しています(「環境設定/組版/ハイライト表示オプション/代替字形」にチェックを入れるとこのように表示されます ※薄い黄色は「H&J違反」で、内容とは無関係です)



  • 和文等幅」は欧文のみに(ペア)カーニングが効きます
  • OpenType機能の「プロポーショナルメトリクス」はフォントに内蔵された情報によって(擬似的に)プロポーショナル幅で文字を配置します(グリフは変わりません)
  • 「プロポーショナル字形に置換」すると、グリフそのものがプロポーショナル幅の文字に置き換えられます(全角欧文も置換されており、和欧文間隔が発生しています)
  • メトリクス(自動)カーニングは「プロポーショナルメトリクス」の状態に、(ペア)カーニングの情報を付加した状態です(グリフは変わりません)


それぞれを重ねてみましょう……



それぞれに「メトリクス(自動)カーニング」を適用して重ねてみましょう……



  • 最初に記したこと――メトリクス(自動)カーニングは、「プロポーショナルメトリクス」を適用した状態に、(ペア)カーニングを付加する――が理解出来るでしょう
  • キャプション部分に間違いがありましたので、画像を差し替えました(2014.10.16)


ここで、メトリクス(自動)カーニングではなく「オプティカルカーニング」を適用してみましょう……



  • 標準字形に「プロポーショナルメトリクス」と「オプティカルカーニング」を適用すると、(全角幅の字形の並びに対する)異なった情報を参照してツメルことになる(重複する)ためツマリ過ぎることになります(書体にも拠ります)
  • プロポーショナル字形(の並び)に「オプティカルカーニング」を適用しても、特にマズイことは発生しません(さらに加えて「プロポーショナルメトリクス」を適用しても変化はありません:設定そのものが無意味)
  • キャプション部分に間違いがありましたので、画像を差し替えました(2014.10.16)


ツメ組みの際には、基本的に「プロポーショナルメトリクス」+「メトリクス(自動)カーニング」を適用するのが一般的な処理方法だと思いますが、こういう「プロポーショナル字形に置換」時の挙動との差をアタマの片隅に置いておくことで、何らかの際に役に立つかもしれません。

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(以下追記:公開当日15:00頃)
で、ここからは動画には記録されていない付録的な事柄です。


「標準字形」に「オプティカルカーニング」を適用した状態と、「プロポーショナル字形」に「オプティカルカーニング」を適用した状態を見てみましょう……



  • オプティカルカーニング」はアプリケーションが独自に隣り合う文字の並びを考慮して判断するので、行頭には適用されません
  • 並んだ状態のアキ具合は異なりますので、(アプリケーションが独自に隣り合う文字の並びを考慮して判断するので)当然のことながら差があります


小塚書体では「標準字形」と「プロポーショナル字形」に差があります(少し驚きました)。



これを重ねて見ると……


  • 明らかに差があるのが判ります
  • 「環境設定/組版/ハイライト表示オプション/代替字形」のチェックは外してあります(見づらい故に…)


試しに「標準字形」を「横組み用かな」に置換してみましょう……



  • 「プロポーショナル字形」は「横組み用かな」と同じ形であることが判ります
  • ということは縦組みでは「縦組み用かな」かも知れませんが、検証は割愛…
  • 「環境設定/組版/ハイライト表示オプション/代替字形」のチェックは外したママです


念のため、重ねてみましょうか……



  • 寸分の狂いもなくピッタリと重なります


私が現時点で気付いているのは小塚書体だけですが、このような例は他にもあるかも知れません……「プロポーショナル字形」を使用する場合は「標準字形」と差がないか確認することが必須です。