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エキスパート字形を印刷標準字形として流用

書籍組版を主にしているので、InDesign上で印刷標準字形(nlck)が使えればそれに越したことはないのだが、前にも書いた通り、問題は山積みしている。
で、普段は、その問題点をある程度クリアできるものとして、各ベンダーの仕様がほぼ共通しているであろうエキスパート字形(expt)を流用している*1。Stdの文字セットでも使用可能なのがありがたい。


OCF時代にはBiblosなどの外字フォントに頼らざるを得なかった文字にエキスパート字形を適用するだけで自動的に置換できるのは頼もしい。ただいくつか問題はあるので、印刷標準字形を呼び出すnlckとの違いを検証して書き留めておこうと思う*2

(以下、赤字部分080406追記
印刷標準字形では表外漢字字体表に掲載されていない表外字は「いわゆる康煕字典体」にはならない。これは表外漢字字体表に字体を合わせるべく例示字形を変更した04JISも同じ。83JISで変更され、04JISで変更されなかった「表外漢字字体表にない字体」および「エキスパート独自の字体」の検討が必要なことにやっと気付いた。200-04-01以降の「JIS例示字形変更と字形セット」と題する記事をご参照あれ。


検証にあたっては、簡易慣用欄・備考欄のものが交じるなど問題が多く、ややこしくなってしまうがモリサワPr5書体を使用した。
※その後、モリサワpr5書体のnlck変換テーブルは改訂された。
 【その資料】


元にしたのは以下の通り。
nlck一覧expt一覧jp04一覧


InDesignの字形パレットでエキスパート字形一覧(expt)を表示して入力したもの(上)と、同様に印刷標準字形一覧(nlck)を表示して入力したもの(下)を用意し(1)、



字形一覧からの直接入力なので(ユニコードとの関連からか)置換字形の強調表示色(InDesignの機能、この場合は黄色)で表示されていないものを強調表示色となるようにした(2)。



さらに、それぞれをコピーして、全選択して逆の字形を適用したものを用意し、それらを重ね合わせたのが下図。



           別窓で大きく表示


ピンク地はそれぞれ、JIS X 0208:1997_6.6.4によって包摂の分離・新設が行われ、JIS X 0213:2000では別コードが与えられたいわゆる互換29字(エキスパート字形一覧)と表外漢字字体表の簡易慣用欄・備考欄の字形(印刷標準字形一覧)。これらはともにエキスパート字形で大丈夫なハズ。


黄色地は JIS X 0213:2004の追加10字で、純粋(?)に字形が違っているのはグレー地のものである。
気をつけなければならないのはこれら黄色地とグレー地の部分で、標準字形で大丈夫なものもあるが、基本的には印刷標準字形に変更する必要がある(置換が必要なものは青枠を付した)。


印刷標準字形としてエキスパート字形を流用している場合は、例の黄色い本の532頁や550頁にも記載されているように、「90年に追加された人名用漢字*3旧字体になってしまったり、78JIS字形(≒エキスパート字形)そのものが誤字であったため、83JISで変更された字形のママでイイものもある。
上下欄で共通する文字も多く、上欄の文字は強調表示色で判別できるし、後半の文字は使用頻度も少ない。しかし、下欄の文字はもちろん強調表示色とはならないため、下欄独自のもの(青太枠)は特に注意が必要だ*4


ともあれ、エキスパート字形のママで大丈夫なもの(青枠以外)もかなりあり、はからずもJIS X 0213:2004の例示字形の変更の多くが、78JIS字形(≒エキスパート字形)への復帰であったことを証明する(この場合、筆押さえの有無は無視して)と同時に、表外漢字字体表の簡易慣用欄・備考欄の字形を優先するモリサワPr5書体の不細工(失礼)な仕様をも浮かび上がらせる結果となった。


ちなみに(2)に標準字形を適用した場合は



となるが、(1)に標準字形を適用した場合は



となり、黄色地以外の文字は目的の字形に置換されない。exptやnlckの字形一覧から直接入力することはまずないので気にすることはないだろう。

*1:この際あまり重要ではないが、ExtといえばNECの文字セットを指していたことからかしばらくは誤解していたが、エキスパート字形は富士通文字セットを呼び出すものであるらしい。これらについて詳しくは、備忘録のCMapファイルの字形 78-Ext-Add についての各項を参照されたい。

*2:字形パレットで一覧表示できるJIS2004字形(jp04/165字)との違いも検証しようとしたが、0213:2004変更自体が表外漢字字体表に合わせることを主眼としたものであるため、現状ではnlck(196字)と大差なく、意味がないのでヤンペにした。31字の差は、表外字体表の簡易慣用欄に表示されている22字と0213:2004で追加された10字、そこから重複する簡易慣用欄の3字(屏4655/痩2795/并4738)と芦7961を削除したものに、蘆6474と?7693と?6288を追加したものであった(22+10−3−1+3=31)。※漢字に後続の数字はCIDコード

*3:表外漢字字体表の参考部分にも記載されているが、漢字袋 が解りやすい。

*4:私はもっぱら、CIDコードで置換セットを作成できるプラグインでしのいでいる。