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禁則調整方式=調整量を優先のすゝめ

以前の記事で、「パーレン部分のQ数を下げたり、欧文が頻出するような本文組で、基本的な設定を自分で決められる場合は『ブラ下がりなし/調整量を優先』を選択する」としていたが、少々考えが変わったことは前回書いたのだが、それは別にして、「ぶら下げなし」組版について考えてみたい。(未だInDesign CS2での話)


「ぶら下げなし」組版を採用している場合、どうも一般的には追い出し処理が多く行われているようなのだが、はたしてそれで正解なのだろうか?


その理由として、たとえば半角分の調整を句読点部分などで処理した場合に読みにくくなること、あるいは行中に調整可能な約物がない場合に追い出ししか選択できないことを想定し、追い込みと追い出しの混在をなるべく避けるためには追い出し処理を優先した方がいいのではないかとする意見がある。


もしかして、活版時代には約物以外はアケルしかなかった行中調整において、手動写植以来可能となった字間をツメるという方法を忘れてはおられるのではあるまいか。
行長が30字程度もあれば、ツメようがアケようがあまり見た目に差はないという事実もあるにはあって、ここで調整量の多寡を比較するのはあまり意味が無いかもしれないが、約物の行頭禁則を処理する場合には、追い込みなら半角程度の調整ですむ場合が多く、追い出しなら全角の調整が必要な場合が多いハズ。もちろん作業効率云々ではなく、調整がより目立たなくなり「読みやすい組版」につながるという意味において。


(以下、一段落追記 071025 10:05)
句読点研究会句読点研究会ニュース第4号において渡辺慎太郎氏がぶら下げ組版がもたらす利点として、句読点が版面上部に集中することを防ぐことを挙げ、ぶら下げを採用せずにすべて追い出しを行なうとき,句読点が行頭2文字目に集中する可能性があることを指摘されていることも追い込み優先を主張するには追い風となる*1


私が手動写植を操作していた頃には、基本的には追い込み処理で、調整の目立たない仮名などを先に、残りを約物という順にツメていたのを懐かしく思い出す*2が、それに近い処理を実現可能としたものとしてInDesign CS2で実装された「禁則調整方式=調整量を優先」の活用をオススメしたい。
未だCSを使用していた頃、行中の連続約物などで発生する半角分の半端なスペースを自動でツメたくて*3InDesignの勉強部屋さんのBBSで質問し、AdobeのマッカリーさんにCS2のこの機能で実現可能だと直々にアドバイスいただいたことを思い出す。


例として以下のような本文を用意した。順に見ていくことにする。
(文字組アキ量設定はデフォルトで用意されている行末受け約物全角/半角、ぶら下がり方法=なし/禁則調整方式=追い出し優先)



1段落目は行頭括弧によって半角分の半端スペースが発生している例、調整可能な約物はなく半角分字間が割られている。
2段落目は行中の連続約物によって半角分の半端スペースが発生している例、これも半角分字間が割られている。
3段落目は行頭禁則文字を処理するため前の文字を含めて追い出されている例、全角分字間が割られている。
4段落目は行末禁則文字を処理するため追い出されている例、これも全角分字間が割られている。


これを禁則調整方式=追い込み優先に変更すると、



行頭・行末にかかる部分では調整可能な場合は追い込み処理されるが、1・2段落目で発生している半端スペースに対しては処理されない。


これを禁則調整方式=調整量を優先に変更すると、



前例に加えて、(行頭・行末に関係なく)調整可能な半端スペースも処理されるが1段落目は不可能なので処理されない。


文字組アキ量設定を少々カスタマイズすることによって、



さらに1段落目も処理可能となり、3・4段落目の句点の後のアキもある程度確保された。


この場合、仮名の前後(句読点の前を含む)の最小値に−3%を入れ、(もとは0%だった)行末以外の読点の後の最小値を+12.5%(八分)、句点の後の最小値を+25%(四分)とした程度のこと*4


1段落目を例に取ると50%を17箇所で確保するにははぼ−3%、3段落目なら残り25%を16箇所で確保するには−1.6%程度のツメが必要となる。設定の−3%イッパイにツメルとしても100Qで3H、32Qで1H、16Qで0.5H、10Qで0.3H程度、あまり気にならない範囲だと思う*5


なお、この文字組アキ量設定を「追い出し優先」に適用しても特に問題(変化)はないし、「追い込み優先」に適用した場合には句読点の後によりベターなアキが確保されることとなり読みやすくなるハズだ。


が、ここで不可解なことが発生。
ちょっと試しに、最後の「文字組アキ量設定をカスタマイズした調整量を優先」の3段落目の読点を句点に変更したら、何故か文字組が変わってしまった*6



それぞれ前の平仮名に対する設定(−3%/0%/0%)も、後の行末に対する設定(0%/50%/50%)もまったく同じなのだが......。


もしかしてバグ? 行末の捉え方が悪いのかな?


(以下071027 13:50追記
原因らしきモノが解った。後の仮名とのアキ量の最小値が12.5%と25%の違いがあるためのようだ。試しに文字パレットで行末の句点の後のアキ量を八分にすると同様に入った。ということは行末約物を半角固定(元々のベースは行末受け約物全角/半角)にせんとアカンのか? で、入った。



行末約物の揃え方は色々意見のあるところだが.......。せっかくアキ量設定に行末という項目があるのに、コレでは意味がないのではなかろうか。
070518の記事で触れた件とともに、このあたりには何か様々な問題が隠れていそうだ。

*1:以前何かのリンクを辿って一読した覚えがあり、この稿を書くにあたって紹介しようと思っていたのだが....やっと再発見したので追記しておく。なお、研究会当日の藤田眞作氏の「縦組にとっての句読点 TeX組版からの見方」と題する報告はこれ(未読)

*2:書体にもよるが、たとえば拗促音、横組みでは「う・く・し」、縦組では「い・つ・へ」など。ここにも同じようなことを書いておられて、何だか嬉しくなった

*3:QXではH&J設定で実現できていた

*4:もちろん実際には仮名前後のみではないが、たとえば仮名と仮名は−4%/仮名と漢字は−2%とするなど、前後の字種によって微調整が必要。しかし、ここでも拗促音が行頭禁則文字に一括りにされているのがちょっと残念。優先順位のコントロールでさらに細かく設定することも可

*5:50%を24で割っても+2%程度にしかならないが....というのはこの際おいといて

*6:ホンマは最初はこの文字列で作成していたのだが、これではちょっと都合がワルイ.....