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CMapの差異の例

InDesignの勉強部屋さんの掲示板での話題を検証していて、CMapバージョンの違いの好例が出てきたので……。


あちらの話題は小塚明朝Pro Rにおいて、文字パレットから入力したCID8443「山立可」がCID17009「石立可」に化けるというものだったが、私の環境では発生しない。
文字パレットで確認するとCID8443はCID17009=ユニコード2550Eの異体字となっており、CS3からタグ付きテキスト(S_JIS)で書き出すと<02550E>となっている。
その親字のユニコード2550E(D855+DD0E)=CID17009が化けた後の文字なのだが、Adobe-Japan1-4準拠である小塚明朝Pro Rには含まれていないハズだが、これがSINGで拡張された部分に含まれている*1
私の環境では文字化けは再現しないのでこれ以上は検証しようもないが、その流れの中でモリサワユニコードFA11はCID8443となっている旨の発言があった。
ちょっと気になったのでそれも含めて各社書体で追試してみた。


まず小塚明朝(表中の数字、1段目はCID:青地はAdobe-Japan1-4/緑地は1-5のレパートリー、2段目はユニコード)。


  • Adobe-Japan1-6準拠の小塚明朝Pro-VI Rで「崎」の異体字を文字パレットから入力し、
  • 1-4準拠の小塚明朝Pro Bに変えてみたが、SINGで拡張されているので、特に問題はない。
  • 拡張されていない小塚明朝Pro Mに変えると、赤で囲んだ部分がロックされた。
  • CID8443は1-4に含まれているものの、ユニコード2550E(CID17009)の異体字として書き込まれているのでロックされ、
  • 17009は含まれていないので当然ロックされる。
  • そのCID8443は内部的にはユニコードFA11=CID14290の異体字として……ということだろう。


次に筑紫明朝。


  • Adobe-Japan1-5準拠の筑紫明朝 Pr5で同様にし、
  • 1-4準拠の筑紫明朝Pro Bに変えてみたが、これは小塚の拡張されていないPro書体と同じ。


さらに問題のモリサワ



この相違は、id:NAOIさんの日本語OpenTypeフォントの分裂の歴史という記事末尾の

フォントとCMapのレパートリは、必ずしも一致しない。たとえば小塚書体は新しいCMapを採用する傾向があり、CS3やCS4に付属する小塚明朝Pro(4.000/4.001)のCMapは、UniJIS-UTF32 1.004(AJ16)である。一方モリサワリュウミンProは、現在もUniJIS-UCS2を採用している。Adobeは最新のフォント間の相互運用性重視、モリサワは時系列の互換性重視ということだろうか。

ということの結果だろう(と思う)。


●関連ページ追加
同じくNAOIさんのモリサワStd・Pro・Pr5・Pr6の違い
実験る〜むさんのCMapの違い資料は複数ある
さらに
NAOIさんが詳細に…小塚ProのSING拡張がらみの文字化け

*1:私の環境(MacOSX)では「ライブラリ/Application Support/Adobe/SING/Glyphlets」の中に「KozGo/Bold」と「KozMin/Bold及びRegular」があり、それぞれ1,068項目ある。少し気になってAdobeさんのサポートに問い合わせたところ、CSのバージョン間での差異はないとのことだった。なお、これらの拡張された部分は1-3準拠のStdに変更しても大丈夫だった(つまりCID14123と14290の部分がロックされるだけ)。