「+DESIGNING」(vol.35)掲載記事の補足
本日発売の「+DESIGNING」2014年2月号(vol.35)に、前号に続いて記事を書かせていただきました。
今号から「おぢんの文字組み手帖」と題され、何回か連載となる予定です(ネタが続くかどうか…)。
で、今回はモリサワのUD 新ゴ コンデンスに関して、その「文字組みアキ量設定」について主に書いています。
記事中にある通り、ベタ組みを実現するとなると自らカスタマイズする必要があり、かなり面倒です。
そこで、今回もInDesign用には設定済みのダウンロードデータを用意していますので、必要があればご活用ください(上記リンク頁末尾より)。
設定例は6種です。
内訳は、長体率3種それぞれに「行末約物半角」を元に、行中約物の「アキなし」(つまり半角取り)の設定(設定名=アキ0)と、より一般的な行中約物全角取りで連続約物処理を施した設定(設定名=アキh…halfの意)の2種を用意しました(3*2=6…「アキなし」の方は前段として必要だっただけなのですが…)。
- Illustratorの貧弱な設定項目数では無理があるので諦めました
で、ここではいくつかの補足説明を加えておきます(主に「アキh」について)。
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▶単独の場合の(いわゆる)半角約物類の行中での最大値は、基本的には全角取り以上にはならないようにしてあります(つまり、最適値=最大値)が、例のバグが大きく影響し、意外と大きくアキが分配されるケースがあるかも知れません。
InDesignはJIS X 4051準拠を謳っており、プリセットの「文字組みアキ量設定」の約物類の最大値に関する考え方としては、
ということが基本としてあり、またそのように数値は設定されています。
が、それを無視してしまうバグがあります。
参照→InDesignの文字組みアキ量設定の4大バグの四つ目
- 簡単に言ってしまえば……延ばし処理に際して、ある種の約物には最大値の設定を無視して「後ろに+1角分(100%)のアキが予め担保されている」(設定値以外にも目に見えないある種の優先的なアキ量を抱えている)ということです
▶その他の文字クラス部分の最大値もそれぞれの全角文字幅の半分程度としています。
- プリセットでは100%が多いですが、このような書体ですのでこれで充分と判断しました
- 主にこの部分が延ばし処理に利用されると考えています
▶最小値にマイナスの設定はしていませんが、「調整量を優先」はある程度の効果を発揮するハズです。
- 禁則処理に関係なく、行長に対する半端をツメル方向で処理可能です。この際に、最小値が利用されます
▶文字前(後)のアキ量は使用することは不適切です。
- (この書体の場合は)文字幅ではなくサイズを基準にアキをコントロールする結果になりますから
▶プリセットの設定では、句読点に和字間隔が続く場合の最適値を変えてある(句点50%・読点0%)のですが、同一にしました(半角程度アキ)。
- 書体の特性から使用場面を考えると同一が適当かなと判断しました
▶和欧文間隔は「アキなし」の状態です。
- 例えば四分アキとするなら、それぞれの全角文字幅(長体率)の1/4を最適値にプラスします
- 変更すべき相手の文字クラスなどはプリセットのいずれかを参考にすればいいでしょう
▶c70とc90の括弧類については全角幅の半分を基本に考えましたが、文字種によっては幅に違いがあるため注意が必要です。
- 下図を参照ください
▶記事中に行頭の中黒がコントロールできない旨の記述がありますが、間違いです。あの図では段落先頭の設定ですね。段落先頭をコントロールするのに行頭の設定を変更していたという、初歩的なミスで申し訳ありません。
- ダウンロードしていただくデータは適正値を設定してあります
- 現状では、段落先頭と行頭の設定は「アキなし」で同一としてあります(最小値=最適値=最大値)
- 文字組みアキ量設定で段落先頭1字下げを実現する場合は、今の値に文字幅分(つまり長体比率)をプラスします
▶c50については、多くの(いわゆる)半角約物類が全角幅の半分(25/50)以上あるため、約物が連続する部分のアキ量は文字クラス毎に微調整してあります。
- そういう意味では、いわゆる連続約物の一方のアキをなしにするように設定はしてあるのですが、枡目に沿って文字が並ぶことは不可能となっています
▶今回の設定例は、あくまでもベタ組み用の設定例(とそれへ至る過程の設定例)ですので、ツメ組みには適用しないでください(特殊な事情を持つ、この書体向けのカスタマイズが逆効果になります)。
- そんな場合は素直に、「文字組み=なし」+「メトリクスカーニング」(+OpenType機能のプロポーショナルメトリクス)で微調整するのがいいでしょう
- テキストの内容そのものは無関係です(掲載記事のテキストを流用したため)
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以上、読者の方の参考になれば幸いです。
(尚、ダウンロードデータはフリーで公開されています)