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InDesignの「斜体」機能

以前の記事にも記したように、InDesignの「斜体」機能は、手動写植機の斜体をシミュレートした機能です。
その記事では「斜体」が作り出す文字の形そのものを、歪みと変形を使って再現してみましたが、今回は「斜体」のオプション項目について少し考えてみましょう。



変形縮小率
手動写植機では、蒲鉾型の変形レンズの1・2・3・4番の4種類があり、それぞれ長体(平体)なら左右(天地)90%・80%・70%・60%となります。その蒲鉾型の変形レンズに角度を付けて回転させることで斜体を実現していました。


InDesignの「斜体/変形縮小率」のプルダウンメニューにある10%・20%・30%・40%がその変形レンズの選択に相当するのですが、手入力では0%〜50%まで設定できます(もちろん、0%では変形はかかりません)。
以下の画像にあるように、角度90度では長体になり、0度では平体になります(実際の写植機上では逆でしたが……)。


角度とライン揃え
角度を0度〜90度の中間値にすると当然のこと縦横比率は異なり歪みが発生します(つまり、天地・左右共に縮小されます)。これが手動写植機の斜体なのです。
「角度」のプルダウンメニューの30度・45度・60度は手動写植でよく使われた角度で、30度が平斜体に、60度が長斜体にそれぞれ相当し、45度は正斜体となります(実際は15度・75度に相当する斜体も使用されました)。
これも手入力では0度〜90度の中間値が設定できます。
※45度で理論上は縦横比率は同じになるハズですがやや誤差が発生するようです。



「ライン揃え」のチェックボックスは上の画像をご覧になればお判りいただけますが、横組みなら水平の、縦組みなら垂直のラインを揃えるという機能です。
変形レンズを回転して実現していたのでこういう処理が必要だったワケですが、「ライン揃え」をしない組み方も表現の一つとしては有効でしたし、現在でも有効でしょう。


ツメの調整
先のように変形レンズを回転して斜体を実現していることから天地・左右共に縮小され、文字サイズと同値で文字を送ると字間に不自然なアキが発生します。
そのような不体裁を(いわゆる)ベタ組み風にするには字間を一定の割合で調整する(ツメル)必要がありました。それを自動的に調整するかどうかを決めるのが「ツメの調整」のチェックボックスです(全体に−トラッキングを適用したのとほぼ同等で、あらかじめ内部でその数値は決められているのでしょう)。
これは基本的にはONにしておいた方がイイでしょう。一般に言われる「ツメ組み(プロポーショナル組み)」とは無関係ですので、決して混同しないようにしてください。



では、「ツメ組み」はどうするのか? といえば、普通の文字同様にメトリクスカーニング(+OpenType機能のプロポーショナルメトリクス)などを適用すれば大丈夫ですし、手動で微調整できるのも同様です。



よく似た「歪み」
InDesignの斜体によく似た機能として、文字パネルに「歪み」がありますが、これは「文字の上辺を右に・下辺を左に」という風に文字通り「歪ませる」機能です……当然、縦横比率に変化はありませんので、不自然なアキが発生することもありません。
さらに変形が必要なら普通の文字列同様に処理すればいいだけです。



現状ではことさら写植の斜体に合わせる必要はあまりないでしょうから、もし斜体が必要ならこちらの機能を使えばイイでしょう。「歪み+変形」機能で写植の斜体に合わせる場合は、冒頭のリンク先に近似値は掲載してありますのでご参照ください。

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オマケ
ということで…アドビのページに書いてある >斜体機能を使用すると、字形の高さを変えずに、中心点からの傾斜させるテキストの縮小率や角度を調整することができます…という記述の「字形の高さを変えず」という部分は大きな間違いです。

参照

「字形の高さを変えず」という場合は「歪み」を使用しましょうね。