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「字送り」という用語について

あちこちのwebページや書籍に「字送り」を文字のセンターからセンターとする誤解を招く図解が氾濫しています*1。確かに写植でいう センター・センター方式 ではそうなのですが、現在のデジタルフォントによる組版では、写植でいうところの トップ・センター方式 と同様に考えるべきです。つまり、文字の頭から次の文字の頭までを「字送り(量)」と理解しましょう*2

  • リンク先に図を交えて詳しく書いたつもりですが、ここにも簡単に説明を加えておきます。

写植 (写真植字)のセンター・センター方式とかトップ・センター方式というのは、印字開始位置の座標に文字の何処を基準に揃えるかを「印字方向(字送り方向)」・「行送り方向」の順に示したもので、トップは「(仮想)ボディの頭」、センターは「(仮想)ボディの中央」を指します*3
つまり、トップは左からの横組みでは「(仮想)ボディの左端」、上からの縦組みでは「(仮想)ボディの上端」となります。
行送り方向は共にセンターですから「(仮想)ボディの中央」固定ということです。
尚、行頭や行末は座標として指定できますが、明確なフレーム様のものは作成しませんので、Illustratorの「ポイントテキスト」をイメージしていただくといいかもしれません。

文章で表せばこれだけなのですが、やや説明不足なので、理解を補うべく以下に関連した図を掲げておきます。



  • 行送りに付している矢印は、「(仮想)ボディの上」だけが行送り値が当該行の下方向に増減するのに対し、他の設定では当該行の上方向に増減することを表したつもりです…「(仮想)ボディの上」以外は1行目の行送り値を変更してもなんら影響はありませんね
  • 文字揃えは他に「平均字面の上・下」がありますが、扱いがややこしいので割愛しました。同書体(もちろんウエイトも)であれば問題ないのですが…
  • Illustratorの行送りの基準位置は「日本語基準の行送り」と「欧文基準の行送り」のみ…それぞれ「(仮想)ボディの上」と「欧文ベースライン」に相当します…なので、縦組みや異級数混植の行送りを正確にコントロールするのはホンマにシンドイです
  • 写植のトップ・センター方式と似ているのは文字揃えが「(仮想)ボディの中央」の場合ということになります


で、主にトラッキングAdobeアプリケーションの和訳では“字送り”ですね)を適用することになるのですが、その単位がよく解らないという声を偶に耳にします。


あの窓に入力する数値は選択している文字サイズ(1em)の1000分の幾らかということです*4。つまり、「500」と入力すれば「+500/1000em」ということになり、「0.5em(半角)分のプラス」になりますし、−100と入力すれば「−100/1000em」となり、「0.1em(全角の1/10)マイナス」することになります*5
当然、選択した文字の後ろが調整され、そこに次の文字の(仮想)ボディの頭が位置することになります。


(「和文等幅」での箱組みの場合は)その行長(テキストフレームなどの幅)は正確に計算しないと、最終行だけが設定通りとなっているという、日常的によく目にする「みっともない組版になるので注意が必要です。
計算式の例をいくつか掲げておきます(なお、指定行長に合わせるトラッキング値の算出方法など、更に詳しい解説はこのブログ内の 「文字組版演算の基本」 をご覧ください)。



  • 文字サイズとトラッキング値から字送り量を算出し、それに(字数−1=字間の数)を掛け、1文字分プラスすると考えればいいでしょう
  • 行末のトラッキング値は吸収されるということの理解が重要です
  • 理屈は考えていただけば理解できるでしょう。もし難しいようでしたらコメント欄に書き込んでください

*1:かなり前になりますが、あるwebフォント関連のページに同様の図解があり、再考を促すメールを送りました…少しは考え直したようなのですが…以下引用>組み方向に向かっての字と字を送る距離(例:任意の並んだ字の仮想ボディ左端から次の字の左端、或は中心から中心)は「字送り*」といいます…この「或は中心から中心」は要らんですよ、誤解のもとですよと言ったつもりなのですがね…*部の注にある「写植機の歯送りが語源です」という記述にも大きな「?」が付きます…

*2:そもそも、センターからセンターなど、どの項目でで設定するのでしょうか? アホなこと言うたらアカン…

*3:同じ位置で印字した場合に文字同士を揃える基準位置と考えてもいいですが…

*4:カーニング値も同じですね

*5:蛇足になりますが、「0」なら1000/1000emで送ることになりますから、「和文等幅」の場合は「ベタ」となりますね