再び、ぶら下げ組について
JIS X 4051:2004「日本語文書の組版方法」の解説199〜200頁に書かれている「ぶら下げ処理について」のなかで、ぶら下げ処理についての規定を追加するかどうかが問題となったが、結局のところ今回(2004)の拡張では追加しないことにした理由の一つとして「ぶら下げ組は,活字組版において調整の作業を軽減するために採用されていたものではないか」との意見があったことが紹介されている。
これは「活版でぶら下げありの組版を行う場合、ぶら下げがあろうとなかろうとすべての行末の外側に一倍の込め物が必要となる(ぶら下がる行のみ、込め物を句読点に替える)。『ぶら下げなし』であれば、それらの手間は不要である」ためぶら下げなしの方が作業性がよいのだとする府川充男氏の意見(「組版原論」太田出版, 245頁)と正反対である。
ややこしくなってきた。
私も前にも書いたように手動写植の経験から「文中で調節する必要が比較的少なくなるのでぶら下げありの方が作業性がよいのでは」と思っていたのだが、府川氏の記述に触れて考え方を改めたばかりなのだが........。
少し観点は違うが、「日本語の文字と組版を考える会」の第17回セミナー「組版が立ち現れるまでに」報告集の中での前田年昭氏の「歴史的に言うと、ぶら下げありというのは、活版においては字間を広げたりしないという、一つの逃げ方のようなものだったわけです。逃げ方というか、守り方というか。」という発言にも注目したい。これも作業性の面から見れば、ぶら下げありの方が作業性がよいと読めなくもない。*1
で、実際のところはどうなのか?
幸い、今も活字組版での出版を主軸にしている東京の出版社とお付き合いがあるので、その依頼先の印刷所にお尋ねしようと思っている。
乞うご期待。
なお、この「ぶら下げ処理について」のなかで言及されている公開プレビューで寄せられた“ぶら下げ処理を位置付けてほしい。”とのコメントは前田年昭氏のこれだろう。*2