InDesignの「斜体」と「歪み」
InDesignの文字パネルに斜体というのがある。
これは手動写植機の斜体をシミュレートしたもので、実によくできている。
InDesignでは「歪み」で簡単に斜体が実現可能だが、手動写植機の斜体と形状を揃える必要がある場合はこの機能を使うのが手っ取り早いだろう。
これを利用して手動写植機の変形レンズの設定イメージ図を作成してみた。
上の図のように手動写植機では、1枚の変形レンズを回転させることで斜体を実現していた。
InDesignの斜体では手動写植機でのいわゆる「ライン揃えなし」の印字も可能である。
※なお、写植では90°が平体となっているので本当の手動写植機での設定は異なる。
この「斜体」の形状を「歪み」で同様になるように調整*1した設定例を下に掲げる。
●変形率20%の場合:写植では変形レンズ2番(横ライン揃え)
●変形率30%の場合:写植では変形レンズ3番(横ライン揃え)
正斜体の変形率が縦横で同じ数値にならないのはよく理解できないが、とにかくこうなった。
※大きさまでシミュレートする必要がなければ、小さい比率を大きい比率で割って設定すればよい*2。
以上は横ライン揃えの場合だが、これを縦組みにすると……
●変形率20%の場合:写植では変形レンズ2番(縦ライン揃え)
色々と調整したところ、結局以下のような設定になった。
少しややこしいが、変形率などは(対角線上で)入れ替えなければならないということ。
「斜体」を「歪み」でシミュレートすることにあまり意味は見い出せないのでこの辺で……。
※とにかくInDesignの「斜体」の機能は写植手動機の「斜体」をシミュレートした機能である、という理解が肝腎である。(この段落110720追記)
以下は写研が配付していた「手動機の斜体」を「電算のスラント」で実現する際の近似値の表。
ほぼ同様の設定となるのが判るだろう。
例えば右正斜体2番はInDesignでは 歪み12.75°で88.25÷90.5≒高さのみ97.5%*3。
上の表からも判るが、手動写植機で長斜体・平斜体との指示だけで、角度指定のない場合*4は30°(InDesignでは30°と60°)で印字することが一般的であったように記憶する。
●以下追記(2011.07.14)
なお、「斜体」のパネルにある「ツメの調整」は、チェックを入れることにより「一般的な全角ベタ組み」と同等の見栄えになる機能で、いわゆる「ツメ組み」とは無関係。
これも手動写植機で斜体をかけた場合に字面が小さくなることに起因して必要となる、字送り換算をシミュレートしたものと考えられる。