なんでやねんDTP・新館

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ぶら下がりの「あり」と「なし」

前(d:id:works014:20070518)に

パーレン部分のQ数を下げたり、欧文が頻出するような本文組で、基本的な設定を自分で決められる場合は「ブラ下がりなし/調整量を優先」を選択する

と書いたが、思いついて府川充男氏の労作「組版原論」を読み返していて

「ぶら下げなし」組版は、そもそも本来タイポグラフィの視点からではなく、活字組版の作業性から生まれたものである。

という記述に行き当たった。結論として

高い作業性を要求される活字組版(例えば新聞や週刊誌)以外の印刷物に「ぶら下げなし」は本来必要ないはずである。

とされ、「ぶら下がりあり」の組版を推奨されている。


私が経験した手動写植の場合は逆に「ぶら下がりあり」の方が作業性が良く、「ぶら下がりなし」を丁寧な組版と錯覚していたフシがあると自省している。(手動写植で書籍の本文組の経験はほとんどないが.......)


とはいえ、現在のDTP環境では作業性に大差はなく、後続の「ぶら下げあり」組版の行末句読点の処理についての段落で氏が仰っているように

肝腎なのは「調整しないこと」ではなく「ことさらな調整を行っていないように、自然に」みせることであり、それが「読みやすさ」に繋*1がるのだということを失念すべきではない。

ならば、充分に行長のある文章(調整が目立たない)の場合、「ぶら下がりあり」と「ぶら下がりなし」のどちらが自然で「読みやすい」のだろうか?


私の感覚では大差はなく、行末に注目した美的な面で勝負しても各論あり、決着はつきにくい。


組版における『保守反動派』」(同書中の府川氏の言葉)たる私は、やはり「ぶら下がりあり」を採用すべきなのか? 悩ましい......

*1: 旧字=Unicode 7E6B