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少々の方針転換_旧字体

ここへ来て、またまた少々方針転換せざるを得なくなった。いよいよもってシッチャカメッチャカであるが、私にとってはかなり重大な決断ではある。


「いわゆる康熙字典体」という語句については、表外漢字字体表の「一.前文 1-(2)表外漢字字体表作成に当たっての基本的な考え方」の中に以下の記述があるのはご存知のとおり。

印刷標準字体には,「明治以来,活字字体として最も普通に用いられてきた印刷文字字体であって,かつ,現在においても常用漢字の字体に準じた略字体以上に高い頻度で用いられている印刷文字字体」及び「明治以来,活字字体として,康熙字典における正字体と同軽度〈引用者注:同程度の誤植か?〉か,それ以上に用いられてきた俗字体や略字体などで,現在も康熙字典正字体以上に使用頻度が高いと判断される印刷文字字体」を位置付けた。これらは康熙字典に掲げる字体そのものではないが,康熙字典を典拠として作られてきた明治以来の活字字体(以下「いわゆる康熙字典体」という。)につながるものである。

が、公許の「いわゆる康煕字典体」とされる「印刷標準字体」が、あくまでも『明朝体活字字形一覧』を見る限りにおいて(出現頻度調査は別にして*1)、はたして本当に「いわゆる康煕字典体」といえるかどうかという素朴な疑問があり、さらに、標準で旧字体を表示するフォントの作成を目指しておられた内田明さんが「クワクチヤウWatanabe明朝プロジェクトの挫折もしくは潜行」と題して公開されている文書の末尾で、「部分字体として出現する『永』の扱いや、沿・鉛の旁の扱いなど、《調査検討の上多数派を採る》ことの難しさを垣間見ることが出来た」と記されていることを、私も垣間見てしまったことによる*2


結論から言えば、旧字体の選定にあたっては思い切って『明朝体活字字形一覧』*3を離れ、表外漢字字体表がそうしているように(私にはそう思えてしまう)、この際「私も基本的には『字統』の解釈に依拠してみようではないか」という考えに至ってしまった(使用可能な文字セットの範囲内で*4)。
それは結果的には正当(?)な「いわゆる康煕字典体」から離れ、延(ひ)いてはいわゆる「拡張旧字体」を採ることにも繋がりかねないのではあるけれど……。


この判断の正否にはかなり疑問符が付くのだが*5、先の引用文の前段で内田さんも「いわゆる新字体と違って、いわゆる旧字体は“新字体でないもの”と定義する他ないようなものであるため、《調査検討の上多数派を採る》か、《諸橋大漢和主義》で行ってみるか、《ああどうせ築地五号の模倣だよ文句あるか》といった作り方をせざるを得ないように思われます」と記されているように、この先へ進むためにはある程度の妥協も容れざるを得ないということ。


ただ『字統』はちと敷居*6が高いので『明朝体・考』さんの「新潮社『新潮日本語漢字辞典』発売」と題する記事中にある「また字解に白川静先生の説を全面的に取り入れたことには快哉を叫びたい。〈中略 by 引用者〉具体的には『字通』,『字統』に示されている解釈をそのまま採用している。」との記述に導かれて、『新潮日本語漢字辞典』を入手するつもり*7
とりあえずは常用・人名用漢字以外を処理してしまってから、常用・人名用に戻って再考を加える予定。
ターゲットとする字体・字形を決めたとしても、InDsignの字形タグを使用することの限界も見えてしまったので、いつまでかかるのやら、先はまだまだ長い。

*1:これの問題点についても先日の記事で紹介した『漢字問題と文字コード』所収のNAOIさんの論考の中で疑問が投げかけられている

*2:同列ではおこがましいですね、失礼。ご寛恕されたし

*3:大枚をはたいて手に入れたモノではあるけれども

*4:完全に準拠は作字しなければ無理だと思う

*5:正直、いまだに迷いがある

*6:=値段

*7:こんだけのためになんぼつことんねん!……ウ〜ン、しょうないわな、というところ。以下080912追記 入手した。「字解に」なので…チョット勘違いしたようだが、今回の用途にはスゴクいい。後日記すつもり。