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広告業界の悪しき伝統「カンパコ」

先日の例を見て“広告業界の悪しき伝統「カンパコ」*1を想起しました”と id:koikekaisho さんからコメントがあり、私も思い出したので手動写植機を操作していた頃の方法とあわせて、本文の「カンパコ=完全箱組」に関して少し……*2


「完全箱組」とは、ツメ組みで段落の頭から最後までをキッチリ箱型に収める組み方で、最終行も行長ピッタリに揃える。コメントに応えて書いておいたが、手動機を操っていた頃の広告やカタログのボディコピーはそんな「完全箱組」バッカリであった。

私の付き合っていた広告代理店のコピーライターは、例えばレイアウトスペースが12Q*22字詰めの場合、【12Q*22字=264=11Q*24字】といった計算式で24字詰めで原稿を書いてくる。もちろん約物は半角扱いで、文字の並びによっては拗促音も……。


ツメ文字盤がなかった頃は、12Qの文字を11H送りで印字するのだが当然のこと漢字部分は1Hプラスし、その分を句読点や拗促音などで調整……

  • 当該行だけでは解決不可能な場合は前後行の比較的ツメ易い部分を見付けて調整


後に(文字をあらかじめ左寄せに設計してある)ツメ文字盤が発売されたらされたで、12H送り基本でツメ文字盤の設定に食い込みを付加して空印字し、行長未満の半端を(例えば)仮名前後:読点後ろ:句点後ろに1:2:4の比率(私の場合)で分配しながら実際に印字していく……
というような手順で実現していた。
InDesignでイメージを再現しようとしたが……煩雑なので断念

その際に重要なのは、漢字部分は基本的にベタで印字し、調整のアキを挿入しないことだった。

  • 「漢字部分は基本的にベタ」に異論はあろうが、InDesign では「文字組みアキ量設定」で比較的容易に実現できるハズ(割愛)*3


先に書いた「12Q*22字詰めの場合、【12Q*22字=264=11Q*24字】といった計算式」はよく考えられたモノで、現在の環境でも有効である場合が多い。
先日の例からコピーを拝借して……*4




  • 「プロポーショナルメトリクス」+私の「文字組みアキ量設定=HW_Ct」を適用 ※設定内容の参照先はココ
  • 「調整量を優先」使用 ※手でツメを調整したい部分もあるが今回は割愛


書体によってはもっと溢れるが、



上の例は溢れた場合だが、もしコピー量が足りない場合は



上のように一度頭揃えで表示して、なるべく行毎に差が目立たないような改行位置を探ることも必要だろうし、「日本語単数行コンポーザー」ではなく「日本語段落コンポーザー」を利用してアプリに改行位置を判断させてもイイかもしれない。



その場合には(今回は作成しなかったが)「漢字部分は基本的にベタ」とした設定がより生きてくると思う。

  • 作例では筑紫明朝系を使用したので比較的容易な作業だったが、書体毎に異なる「プロポーショナル情報の出来」や「字面率」を考慮しなければならない場合もあり、そう簡単には行かない場面が多いと思う。
  • また、写植の経験から1/32em≒31/1000em程度のツメ・アケは許容範囲(特に目立たない)だと認識している(これも書体によりけりではあるが)。


しかし、先日の例(カンパコではないが)のように、文章の意味から改行位置を決定し、プロポーショナルで組んだ際に行長に差があり過ぎるモノを無理矢理に左右揃えにするなど、愚の骨頂である*5
その過不足をコピーを書き換えて調整するという丁寧な手順を踏まない限り、まさに「悪しき伝統」でしかない。
それが不可能ならば、いわゆる「ラグ組み」あるいは「センター揃え」にするなど、デザイン的な妥協を選択する勇気も必要だろう。

*1:容易に連想できたが、実はこの用語を知らなかった

*2:私の場合、最近は「カンパコ」で組むことは皆無

*3:最大値を100%から0%にすればイイが、調整可能箇所が減り過ぎると判断すれば25%などに

*4:少しアレンジ

*5:さらにアレは強制ぶら下げ……「何やっとんねん!」と言いたくもなるのである