Illustratorでの文字組_その4_「ぶら下がり」と「禁則調整方式」
「Adobe Illustratorというアプリは長文の日本語文字組版に使用すべきではない」という認識を前提として、それでも使わざるを得ない環境に居られる方に向けて、イランお節介みたいな記事を何回かに分けて掲載するつもり。あくまでも私個人の主観的な意見でしかないが、何かの参考になれば嬉しい。
●Illustratorでの文字組_その4_「ぶら下がり」と「禁則調整方式」
Adobe Illustratorを使用した日本語文字組版の段落設定に関わる重要な項目として,「ぶら下がり」と「禁則調整方式」の挙動を確認しておこう。
※もちろん「文字組みアキ量設定」とも密接に絡むのは承知の上だが,ややこしくなるので……
まず,以下のような文字組み例を用意した。
行頭禁則文字でかつぶら下がり対象文字ある読点(コンマ),行頭禁則文字だがぶら下がり対象文字ではない終わり(受け)カギ括弧,行末禁則文字の始め(起こし)カギ括弧のそれぞれが行末(20字)前後にある例と,連続約物の関係などで文字が行末に掛かっている例で,それぞれ2行目は行中に括弧類を配置して調整可能箇所を増設してある。
文字・段落関係の主な設定は以下の通り。
現状はテキストエリアの左右を22字分で収めているが,この左右を20字に変更し,ぶら下がりオプションの設定と禁則調整方式の組み合わせを変えて,その挙動の違いを確認した。
その結果の pdf はコレ → ai_ぶら下がりtest.pdf 【アイコンをクリック】
その中から代表的な例を抜き出し簡単に説明を加えると……。
※図中の赤い「×」や「?」は挙動不審に思える部分だが,煩雑になるので後続の記事で言及することとし,ここでは触れずにサラッと流すに留める。
■ぶら下がりオプションについて(ぶら下がり対象は句読点のみ)
「ぶら下がり=なし」の場合
版面を超える句読点(および行頭禁則文字)は
- 追い出し優先では 直前の文字と共に次行へ追い出されるが
- 追い込み優先では その行で調整して追い込み可能なら行長内に追い込まれる
「ぶら下がり=標準」の場合
版面を超える句読点は,禁則調整方式に関係なく
- 版面を超えて(外に)ぶら下げて配置される
「ぶら下がり=強制」の場合
折り返し改行位置の前後にある句読点は,禁則調整方式に関係なく
- 版面を超えて(外に)ぶら下げて配置される
見れば判るように,「ぶら下がり=標準」の設定が行長調整の必要が最も少なく,「ぶら下がり=強制」の場合には最大で1字分が各字間に割り振られる。
なお,プロポーショナル組み(ツメ組み)の箱組み文章で「ぶら下げ」を採用している例を散見するが,本来は枡目組みを維持するための組み方という認識をもつ私からすれば,「何やってはんの?」という不思議な「オバカな」組み方と言うしかない。
関連ページ 結 ぶら下げ組について
■禁則調整方式について(対象は行頭・行末禁則文字)
行頭・行末禁則の処理をするに際して,
- 追い込み優先では その行中で調整可能であれば追い込み処理を行うが
- 追い出し優先では 調整可能か否かを問わず追い出し処理を行う
※追い出し優先/追い出しのみの差までは深く掘り下げての検証は割愛した(作例では特に差はない)。
なお,最下段の2段落にあたる連続約物の関係などで文字が行末に掛かっている例では,行頭・行末の禁則とは無関係なので禁則調整方式のどのオプションを選択しているかに関わらず,すべて追い出し処理される*1。