不等号と山括弧
「書体と遊ぼう!! へるべちたん」というHPに混同しやすい約物類という記事が挙がっている。
少し記述に間違いがありコメントしたいのだが、末尾に「コメントは受け付けていません。」とあり、ご連絡のしようもないので記事にしておく。
※現在では修正されており、メールフォームも設置された*1。
以下がその記事の冒頭部分(無断引用、乞寛恕)。
例示画像の直後のテキストに“まずは、「山カッコ(<>)」と「不等号(< >)」だよ。”と書いておられるのだが、これは両方ともU+003CとU+003Eの組み合わせでしかない(コピペしてコードを調べた)。
一方、例示画像は(使用フォントは不明だが)上が不等号 U+003CとU+003Eの等幅半角字形を使用し*2、下は全角不等号であるU+FF1CとU+FF1Eを使用しているに過ぎないと思われる。
これでは「くろうと」としては「ちょっと違います」と言っておかざるをえない。
フォントにも依存するが、例えば小塚ゴシックPr6N-Mの場合、InDesign上の字形パネルは以下のように表示される。
これらの字形とコードとの関連は以下の通り……
- 最下行スペルミス発見…ご勘弁ください(Equivalent toとも)
で、結局、山括弧はU+3008(シフトJIS 8171)とU+3009(シフトJIS 8172)を使用すべきである……ということ*3。
また、改定常用漢字表の答申にも山括弧の代用として不等号が使用されているのはよく知られているところだが、その理由はハッキリしており、小形克宏*4(id:ogwata)さんのブログ「もじのなまえ」の改定常用漢字表試案への意見と題する記事の末尾の方に、“試案は引用符として、不等号の「< >」を多用している。その理由について氏原主任国語調査官は、本来の引用符である山つき括弧「〈 〉」は角度が浅く丸括弧とまぎれてしまうので角度の深い不等号を使ったと説明している。”と記載されている*5。
なお、写植の文字盤でも全角の山括弧は在ったのは事実で、あながち間違いと断罪することも大人気ないのかもしれない。が、決して不等号を流用したモノではない。参照見本(左下部に)
※もし代用する場合には括弧類として認識されるワケではないので、禁則文字セットに登録することをお忘れなく。また、欧文用記号と認識される字種で代用する場合には、当然「文字組みアキ量設定」との兼ね合いも考慮することもが必要となる。
上の作例は「文字組みアキ量設定=なし」でセンター揃えとしてあるが、和欧文間に4分アキが適用される「行末約物半角」で頭揃えとすると……
- U+003CとU+003E由来のモノには4分アキが適用される