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「字取り」の設定方法

組版の現場において「字取り」という用語があります。「一定の文字サイズで一定の字数分の組み幅に文字を均等に配置すること」をいいます。
その「字取り」を実現するには様々な方法があり、使う場面やアプリケーションによっても最適解は一つではありません。

少し挙動が異なる部分がありますので、InDesignを中心に解説していきますが、Illustratorについては、補足的に有効かどうかを記すようにします。

まずはもっとも簡単に思える、フレームサイズを一定にして揃える場合から…

●「両端揃え」
Illustraror上での挙動は異なりますので末尾に補足します

以下のように人名などを5字取りで揃える場合、フレームサイズを5字分(目的の揃え幅)としてあれば、1字分として開けたい部分には全角スペースを挿入しておき、行揃えとして「両端揃え」*1を適用すればすんなりと解決すると考えがちですが、実際はそうではありません

画像(下)に示したような結果になります。見ると判ると思いますが、和字間隔(全角スペース)の部分の送りが和字部分のそれよりも狭くなっており、求める結果とは異なります。

その原因は「文字組みアキ量設定」にあります。デフォルトで用意されている「文字組アキ量設定」の画面は以下に掲げるような内容ですが、14種類のすべてが同様の設定になっています。

和字間隔(全角スペース)と両仮名(ひらがな/カタカナ)や漢字(上記以外の和字)の関係を見ると、和字間隔が「前」か「後」かで最大値が異なります(100%と0%)。
つまり行長調整の必要が生じた場合には、(前)和字間隔:(後)和字の場合には最大で文字サイズの100%までアキを割り振りますが、(前)和字:(後)和字間隔の部分にはアキを割り振らないという設定です。

一方、和字同士の場合の最大値は上に掲げた通り100%…これでは並びにズレが発生するのは当然ですね。
因みに +DESIGNING さんのサイトで公開されている拙作の最新版*2では当該箇所は共に100%と変更してありますので、当然のことズレは発生しません(下の画像参照)。


これ以後の部分は、文字にアキなどを設定しますので、フレームサイズに関係なく文中でも有効です。但し、適用する範囲には注意が必要です。

●文字前・後のアキ量
Illustratorにも有効です

追加が必要なアキ量を計算して字間数で割り「文字前・後のアキ量」を適用するのもひとつの方法です。

  • 作例では行(文字列)頭から「文字後のアキ量」を適用しましたが、行(文字列)末から適用する場合は「文字前のアキ量」を適用します
  • 例えば、2字分を3箇所に割り振るなら2/3となりますが、「2/3」という選択肢はありません…なので、そのような場合はアキの必要な部分の文字の前後に「三分アキ」を挿入すれば「1/3+1/3=2/3」となります(臨機応変に考えましょう)

●トラッキングと字取り
Illustratorには「字取り」の機能はありませんが、トラッキングは有効です

ラッキングは、先のアキ量をトラッキングに換算して適用すればいいだけです。
また、InDesignのフレームグリッド内ではそのフレームグリッドに設定されている文字サイズを基準にした「字取り」が可能です。*3

  • ラッキング値の計算方法は、1字分=1emとし、n/1000em単位で設定します。例えば2字分を字間5箇所に割り振るなら、2000/5ですから「400」を設定します。
  • 上のトラッキング例の場合は1/1000emの誤差が発生していることになりますが、データを見ない限り気付かれることはほとんどないでしょう

但し、ラッキングを適用した文字を親文字としてルビを振るのはNGです。以下の通り親文字の範囲が不正になります。

他の方法では「ルビ」に関しては特に問題はありません。

以上の段落パネルおよび文字パネルでの設定場所は下の画像の通りです。

Illustratorの両端揃えの場合

さて、Illustratorのエリア内文字での「両端揃え」の場合ですが…残念ながら以下の通りです。

ご覧の通り、左右とも同じように文字を並べてはあるのですが、行揃えを「両端揃え」とした結果が異なります。左のフレームに入力してあるのはU+25A1の普通の四角です*4

左のようになれば特に問題はありませんが、普通の文字を入力した場合は右のようにしかなりません。

和字間隔(全角スペース)とそれに隣接する(記号ではない)一般的な仮名や漢字との間には行長調整のアキが割り振られないように設定されているのだと考えられます。
が、ご存じのようにIllustratorの「文字組みアキ量設定」は弄れる範囲がごく限られています。つまり(全角スペースを和字1字分同等としたい場合はお手上げです。

Illustratorでは、字取り処理をする目的で揃えるべき幅にテキストエリアの幅を設定し、「両端揃え」を適用して目的の結果を得るということは不可能だと覚えておいた方がいいでしょうね(但し、全角スペースがなければ大丈夫でしょう*5素直に他の方法を採りましょう

*1:「行頭行末揃え」「左右揃え」とも…

*2:右のリンクからダウンロード可能です。(旧版というのはVol.34およびVol.38連動のモノ…最新版はVol.42に合わせて公開したモノ…簡単な見分け方は、旧版は「ベタ用_A」とか「ツメ用_D」と「用」がついていますが、新版は「用」は付けておらず「ベタ_A」「ツメ_D」となっています

*3:こちらは作例を見る限り「文字組アキ量設定」の影響はないと考えられます。また、プレーンテキストフレームでも「字取り」は可能ですが、13Q基準となってしまいますので「出来ない」と考えておいた方が無難でしょう(裏技的に13Q以外に設定することもできますが、ここでは措いておきます…)。

*4:蛇足ですが丸U+25CBや電話マークU+260Eでも同様でした

*5:もう少しツッコんで言ってしまえば、「文字組みアキ量設定」の影響でこうなっているのですから、「文字組み=なし」としてしまえば、スンナリと揃ってしまいます。「なし」はあまり推奨したくないのですが、このような場合はそのようになる原因を理解して使うにはいいかもしれません使うなら特に問題ないでしょうね。尚、InDesignの場合も同様です。