なんでやねんDTP・新館

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引用文に続く段落の扱いについて

いま読んでいる本に『国語審議会 迷走の60年』*1というのがある。三分の二ほど読み進んではいるものの、あまり面白くないので最近は手が伸びないのだが、その本文中には引用部分が夥しい*2


その組み方はほぼ以下のようなモノ(例は当該書149〜151頁、実際は引用文前後1行アキ)*3



このような原稿の組版を私が担当するとすれば、基本的には「段落先頭1字下げ」であったとしても、引用文を「と」など*4で受ける1例目や2例目の場合には(後ろの2例はOK)、改行後も1字下げは行わないで以下のように組むことを提案する。



つまり、引用文を挟んではいるものの文章としては繋がっているので、段落が切れているとは見なすべきではないという考えなのだが、執拗に強く推すようなことはしない。
口角泡を飛ばして議論するようなことでもなく、まぁハウスルール的な解釈で、その書籍で統一さえされていればイイという類のことであろうとは思うから。


同様な例で、小説などの場合には

そのとき私は、反射的に間髪いれず【改行】
「なんでやねん! あほちゃうか」【改行】
と口走ってしまった。この場合の「あほ」は、もちろんある意味「愛」をこめ………

などと会話部分を改行で区切って表現されることも多い。これも一応疑問は呈するが当然著者の判断に任せる。
例えば、先日組んだ同人誌*5の場合は、作者によって様々なので勝手に字下げなしに統一しておいたが、初校で朱が入って返ってきたのはお一人だけだった。
もちろん、その部分は作者の仰るとおり「1字下げ」に直して再校出しをすることになる(この場合には同人誌全体を統一する必要はなく、作者それぞれでイイと考える)。


このようなことは『日本語文書の組版方法』(JIS X 4051)では規定されていないようだし、他の手持ちの類書でも言及されていないが、『標準 校正必携 第七版』*6には、204頁「組方原則および調整」の「行頭・行末のきまり」の「2」として記載されているほか、『日本語組版処理の要件(日本語版)』「3.1.5 行頭の始め括弧類の配置方法」の「注2)a.」でも少し触れられている。


※この原稿は091202には用意していたのだが、「オバカな組版例」が次々と目に入ってしまったため今日に至った。尚、「オバカな組版例」は挙げだしたらキリがないので、スゴく特徴的なモノを見つけたらまた報告することとして、とりあえず打ち止めとする。

*1:安田敏朗, 2007, 講談社現代新書

*2:その内容から仕方ないのだろうが、全体の1/4ほどあるのでは……という感じがする

*3:この例は「オバカ」シリーズに入れるのは憚られる

*4:他に「が/で/など/の/は/も」などが考えられるが、経験上は圧倒的に「と」が多い。もちろん著者のクセのようなモノも影響するのだろうが……

*5:この同人誌は編集担当が居ても役に立たず、よくある「〇〇通信」のような雑記事を、うっかり前号のママ初校出ししたところ、(前号の最終出稿版に)朱が入って返って来た

*6:日本エディタースクール編, 1995年第7版第1刷(1966年初版), 日本エディタースクール出版部 ※先の『日本語文書の組版方法』以前のモノなので改版が待たれる