Illustratorでの文字組_その1_ベタ組(枡目組)
「Adobe Illustratorというアプリは長文の日本語文字組版に使用すべきではない」という認識を前提として、それでも使わざるを得ない環境に居られる方に向けて、イランお節介みたいな記事を何回かに分けて掲載するつもり。あくまでも私個人の主観的な意見でしかないが、何かの参考になれば嬉しい。
●Illustratorでの文字組_その1_ベタ組(枡目組)
Adobe Illustratorを使用した日本語文字組版で、基本的に約物全角扱い*1のベタ組(枡目組)の場合は、テキストエリアの行長は文字サイズの整数倍とするべき。
※最も基本的なことだと思うのだが……守られていない例を目にすることが多過ぎる(新聞の全面広告などのボディ文字組みなど)。
- ベタ組(枡目組)の文字ツメなどの設定はコレが基本
※上記、カーニングの部分は「和文等幅」ですね…御免なさい
※「自動」の部分(文字前後のアキ量)は「文字組みアキ量設定」に依存するハズ……なので、決して「ベタ」としてはダメ!
勿論、数値入力でテキストエリアを作成するのがベターだが、作業の途中で文字サイズを変更せねばならないこともあるだろうし、マウスドラッグでエリアを適当に作成してしまうこともあるだろう。
そんな場合は、変型パレットあるいはガイド類を利用してキッチリと成型する必要がある。
さもないと、必然的に整数倍を超えた半端が各字間に割り振られ、よくあるような段落最終行のみがベタを維持している……という無惨な結果を呈する(下の画像、二つ目がその例)。
16Q*20字詰め(4*20=80mm)を
15Qに変更(左右は80mmママ)した場合
- 80mmに15Qはほぼ21字入る(80/3.75=21.333…)が、小数点以下(3.75mm*0.333…)が各字間に割られており、段落最終行のみがベタ組の状態となっている
こんな場合は、ダイレクト選択ツール(白矢印)でテキストエリアの任意の一辺をクリックしてから*2、
15Q*21字の左右に(3.75*21=78.75mm)
但し、ごく稀に換算誤差が原因で思った通りの字数が入らないことがある。
その状態を再現するのは難しいので割愛するが、要は必ず一度は字数を確認する必要があるということ。
そんな場合は、上と同様の方法で変型パレットに0.0001mm程度をプラスしてやると*3、収まってくれる(だろうと思う)。
- +0.0001しか見えていないが実際は「78.75+0.0001 mm」
結果的には以下の通り。
- 0.0001mmプラスしても、結果的に変型パレットのサイズ表示は「78.75」となる
また、何らかの制約により行長を文字サイズの整数倍にすることが不可能な場合でも、(基本的に枡目組を実現したいならば)最終行の文字ピッチも同じになるように、テキスト全体に対してトラッキングを掛けるべきだろう。
例えば以下の場合
行長78mmに文字サイズ16Qなら19.5字入る(78/4=19.5)ことになるので……
均等にツメて 20字(字間は19)入れる場合の計算方法は
(78−4)/19/4=0.9736842
トラッキング量は 0.973682*1000−1000≒−27 ※小数点以下切り上げ
均等にアケて 19字(字間は18)入れる場合の計算方法は
(78−4)/18/4=1.0277777
トラッキング量は 1.0277777*1000−1000≒+27 ※小数点以下切り捨て
つまり、行長から1字分減じたモノを字間で割った数値が字送り量となり、さらに文字サイズで割ることでベタ送り量に対する比率となるので、そこからトラッキング量を計算すればよい。
面倒であれば行長を字数で割って字送り量の概数を算出し、そこから求められるおおよそのトラッキング量を入力して、その前後の限界値を割り出してもいい*4。しかし、だいたいでいいからとホントに適当な数値を入れたままにしておくと、段落最終行の字送りが揃わないのは言うまでもない。
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以下、公開当日11:05頃追記
なお、文字の並びとしては特殊な例かも知れないが、(漢数字の「〇」を含めて)一部の記号類には「文字組みアキ量設定」の「アキ」が適用されない場合があるので、注意が必要。
※Illustratorの漢数字〇(ゼロ)と題した以前の記事にも追記しておいた。