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写研とJISの関わり

先日の記事に関連して、『文字に生きる〈写研五〇年の歩み 51〜60〉』*1に「写研とJISの関わりを記した部分がある」とコピー資料をいただいた。


以下に全文を掲載させていただく*2

JIS制定に参加 ところで、コンピュータによる情報処理も今では漢字を用いた普通の日本文が常識になっているが、全国的に共通に、高度な情報処理の利便を受けられるようにするための国家的な基準の役を果たすJISの制定にも、写研は参加している。
 その主なものの一つは、昭和五十三年に制定された(昭和五十八年改訂)JIS C6226「情報交換用漢字符号系」である。これは、漢字六三五三字(第2水準二九六五字、第2水準三三八八字)のほか仮名、数字その他通常の通信文程度に用いられる欧字、記号約物類等合計六八七七字(改訂後)を選定し、それぞれ文字をコンピュータの情報として相互に交換し合うさいのコードを定めたものである。昭和五十年代から、各電算機メーカーはそれぞれの漢字による情報処理を拡充して行ったが、使用する文字の字種や数、そしてそれらをコード化するさいのコード付けの方法は、ほとんど各社それぞれに、独自に進められていた。それでは綜合的見地から情報を相互に活用し合ったりして、経済性を高めるメリットがなくなるので、統一的な基準を確立しなければという気運が高まり、JIS制定につながったのである。
 漢字情報処理の結果は当然多くのものが印刷されるので、そのさいの字形も併せて規準化してはどうかと言う意見もあった。しかし表現に多彩な趣を求めうることを特長とする出版・印刷業界にとって、字形の規準のようなものが性急に作られることは影響が大きく、かえって混乱を招きかねない。写研は常用漢字表の制定に当たっての審議のさい、国語審議会での字体調査に参画したことなどを通じて、印刷業界での字体・字形の考え方を闡明する必要を感じ、工業会代表委員として審議に参画した。その結果、C6226では字種の範囲とそれに対応する符号だけを規定し、字形は規定しないことになった。ただ、文字を規定するためには、統一された解釈のもとに整理された印刷文字によるのが最もよいという見地から、JISの規格の本体である対象全文字をコード順に配列した符号表の版下の印字は、写研が担当している。前述したようにこの規格は字種とそれに対応する符号との対応関係のみを規定し、規格表の字形は規範または見本の意味を持つものではないが、参考として重宝される事例も見受けるため、印字の字形には特に注意を払って委員会の審議に従ったものを用い、写研書体と相違のある文字は、別途に原字を制作して規格表作製に協力している。現在では、ワープロなど漢字を使用するオフィス用機器はほとんどがこのJISの規定に準じて収容文字字種を定め、データ利用の拡がりに備えられる態勢を整えつつある。

  • 出典:『文字に生きる〈写研五〇年の歩み 51〜60〉』, 「文字に生きる」編纂委員会編, 写研, 1975 1985年11月, 72-73頁

「この規格は字種とそれに対応する符号との対応関係のみを規定し、規格表の字形は規範または見本の意味を持つものではない」と極めて正しい認識を示している。

  • JIS C6226は1983年、1990年および1997年に改正された、おなじみの(現)JIS X 0208「7ビット及び8ビットの2バイト情報交換用符号化漢字集合」のこと。JIS X 0213はその拡張版。


●以下、20100913追記
ココをご覧になった提供者が間違いを指摘してくださり、出典表記について訂正した。
『文字に生きる〈写研五〇年の歩み〉』の存在しか知らなかったので、『文字に生きる』とだけ聞いて記事を書いてしまったが、写研は1975年の『文字に生きる〈写研五〇年の歩み〉』の続篇として、1985年に『文字に生きる〈51〜60〉』を発行しているということ。
※奥付にあたる表記は以下の通り*3


*1:出典の表記を訂正_20100923

*2:権利的な問題があれば削除いたしますので、ご連絡ください

*3:FAXでいただいたモノなのでキレイではない