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再び「次」について

文化庁国語施策情報システムの国語施策沿革資料12_41ページ(当用漢字字体表_一一頁)には以下の字体が掲げられている。


左:当初の当用漢字表の字体


これでは曖昧で判断に困るが、その付録の「国語審議会第十四回総会における安藤主査委員長の報告―当用漢字字体表について―」と題する文書は、一部「平/来」など旧字体は残っているものの、意図的に新字体で表記されたと思われ、そこに現れる「次」は以下の通り:国語施策沿革資料12_56ページ(当用漢字字体表_二六頁)。



この当用漢字字体表を受けて新聞協会が制定した字体は以下の通り。


(社)日本新聞協会「新聞活字字体統一に関する資料」の当用漢字字体表(対照活字字体)より。*1


現行の常用漢字表も同様の字体である。「次」の「にすい」様の部分は実は「にすい」ではなく「二」が元になっていることは旧字体を見れば判るが、私もこちらの方が好きだ。


JISの例示字形が常用漢字表と一致しないのは以前の記事で報告した通り、各フォントベンダーもイワタ・モリサワを除いてデフォルトで表示されるのはJISの例示字形と同一、ヒラギノなどは常用漢字表と合わせた字形は実装していない。


だが皮肉なことに、そのJIS X 0208の規格表印刷に使用されたという写研の「次」はというと、常用漢字表に合わせて改訂されており*2、別件だが表外漢字の拡張新字体というべき「茨」はJIS X 0213の04例示字形変更よりとっくの昔に「いわゆる康煕字典体」に合わせて自主的に改訂されていたようだ。


左:改訂前の石井細明朝体(LM)、右:改訂後の本蘭細明朝(LHM)。*3


さて、新常用漢字表(仮称)はどうなるのかな?


※現在調査中だが……これらの変更は電算写植の字形には及んでいない可能性が大きい*4(091127追記

*1:上記、国語施策沿革資料12にも収録されているが、未公開

*2:時期は常用漢字表告示に合わせて大改訂された1981年10月と思われ、ここで「スレ違い」があったようだ

*3:もちろん私の所有している石井中明朝体も改訂後のモノと同字体である

*4:今読んでいる『国語審議会─迷走の60年』(講談社現代新書)は写研の中明OKLのようなのだが、「次」はJISの例示字形同様のCID2253様になっており、2007年の刊行。念のため、私の事務所で確実に中明OKLで組んで電算出力した1998年刊行の書籍を確認しても同様。写研さんに質問メールを投げたのだが……。ちなみに手持ちの中明OKLの文字盤は同様の変更がなされている